足首の捻挫は、受傷直後の処置(RICE処置等)が的確であれば、軽度のもので1週間〜、中等度のもので3〜10週間程度で、スポーツ復帰が可能と言われています1)。
そのため、炎症が治まり、傷んだ靭帯が回復すれば痛みも引いていくものなのですが、なかにはなかなか捻挫が治らず、何ヶ月もその症状を抱えてしまっている方がいます。
組織は回復しているはずなのになぜ治らないの?と疑問に思っている方もいるかもしれませんが、その多くが足以外の問題で捻挫が治らない状況が作られています。
問題をしっかりと見極めアプローチしていけば、症状は改善されていきますので、今回はその方法を紹介していきます。
足首の捻挫が治らない原因
足首の捻挫の場合、くるぶし周りの靭帯が損傷することで、痛みを引き起こすのですが、これらは通常であれば、時間の経過とともに組織が修復され、痛みも引いてきます。
ではなぜ何ヶ月も治らない捻挫があるのでしょうか?
その原因は、主に以下の3点が考えられます。
関節が固い
一度捻挫を経験していると、足を捻った時の衝撃や、受傷後のかばった動作により、靭帯や関節包が固くなり、関節が固まってしまう場合があります。
通常であれば、固くなった関節は時間と共に元に戻るのですが、何かの拍子に緊張が続いてしまうと、関節のバランスが崩れ、影響された組織から、異常な信号が受容器(腱紡錘等)を通して脳や脊髄に伝わり、その信号がさらに靭帯を固めるという悪循環に陥ります。
足首の関節が固いと、立ったり歩いたりする時に荷重を上手く捌くことが出来ないため、負担のかかった部分に痛みを引き起こします。
距腿関節、距踵関節、遠位脛腓関節、距踵舟関節などが固い人は注意が必要です。
下腿の骨間膜が固い
膝から下の部分には、脛骨と腓骨という2本の骨があるのですが、その骨と骨の間に、骨間膜という密性結合組織の膜があります。
この膜は、脛骨に対する腓骨動きに影響を及ぼしたり、足関節窩の安定に働くため2)、固くなってしまうと、足首に問題を引き起こす可能性があります。
これらは、捻挫の時に衝撃で固くなったものが残存している場合もありますし、腰の歪み等により座骨神経が緊張して、後から固くなってしまった場合があります。
腰や骨盤が歪んでいる
足首に問題がなくても、腰や骨盤の歪みから、構造的に足に負担がかかる状態が作られ、痛みが出る場合があります。
このような場合、足関節が固くても靭帯が固まったような引っかかる感じはないので、基本的に足を治療しても意味はありません。
固さは他の部位からの補正で生まれているものですので、歪みの原因となっている部分を特定し、治療していかなければなりません。
※腰や骨盤が歪んでいると、座骨神経も固くなるので注意が必要です。
足首の捻挫が治らない時の対処法
対処法としては、まずは構造的に重大な問題がないか確認する事と、問題をホントに引き起こしている原因を特定し、効果的なアプローチを取ることです。
病院で検査を受ける
たまにあるのですが、捻挫が治らない場合、調べてみたら実は骨にヒビが入っていたり、剥離骨折している場合があります。
症状が捻挫と変わらなかったり、初期の段階ではレントゲンで上手く映らない時がありますので、ある程度しても症状が良くならない場合は、再度病院に行き、体を見てもらってください。
治療を受けよう
検査を受けて、もし骨の問題が発覚したら、お医者さんの指示にしっかり従ってください。レントゲン等の検査をしても、問題が確認されなかった場合は、軟部組織の問題の可能性がありますので、一度当院にご相談ください。
上記で説明した通り、捻挫が治らない原因はいくつかありますので、単に足だけ見ても症状の改善は望めません。
足関節を含めた下肢全体と、腰や骨盤の状態を見ながらアプローチしていく必要がありますので、放置して重症化する前に、お気軽にご相談ください。
まとめ
足首の捻挫が治らない場合は、足周りの関節や骨間膜の固さと、腰・骨盤の歪みが原因になっている可能性があります。
ただストレッチをしたり、足首を治療するだけでは症状の改善は望めませんので、体全体を見ながら、問題を把握しなければなりません。
病院で検査を受け、骨の問題がないと確認されたら、後は軟部組織の問題ですので、是非当院にご相談してみてください。
2.坂井建雄・松村譲兒(2014)プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 医学書院 P414