ぎっくり腰になってしまった時って、ちょっと動くだけでも激痛が走るので、今すぐどうにかしたいと思いますよね。
そんな時に真っ先に浮かぶのが、冷やしたり温めたりする方法だと思います。
簡単にできますので、これからやろうと思っている方もいるかもしれませんが、知らずに間違った方法を試してしまうと、症状の悪化につながる可能性があります。
適切に対処すればこのような事はないと思いますので、今回はぎっくり腰になった時は冷やす方法と温める方法。どちらが良いのかまとめてみました。
冷やしたり温めたりするとどんな効果があるの?
それでは、まずは冷やしたり温めたりすると、体にとってどのような効果があるのか見ていきたいと思います。
冷やす効果とは?
冷やす効果についてまず浮かぶ事は、炎症の抑制です。
体に冷刺激が加わると、その刺激を温度を感じるセンサーがキャッチする事で、脳になる「体温調節中枢」という所に伝わります。
脳に刺激が伝わると、体はこれ以上体温を奪われてはまずいと考えますので、血管を収縮させ、冷えるのを防ごうとするのです。
この時に、血管が収縮してしまえばそれ以上発痛物質や炎症物質が広がりづらくなりますので、熱や痛みを抑えることができます。
また、冷刺激は痛覚神経を麻痺させるという働きもありますので、脳に痛みが伝わりづらくなるという作用もあります。
脳に痛みが伝わりづらくなれば、防御反応で体を固める事もなくなりますので、関節や筋肉の固まりを防ぐ事もできるのです。
温める効果とは?
体を温める効果というと、やはり血流の改善です。
こちらも冷刺激と似たようなメカニズムで、体に熱が加わると、その刺激をセンサーがキャッチし脳に伝えます。
脳に信号が伝わると、体は深部にある組織の温度が上昇しすぎないように、血管を拡張させ、熱を放散しようとするのです。
このメカニズムがあるため、体は温めてあげると組織の血流増加と血行の改善が望めます。
血行が良くなれば、組織に溜まった疲労物質や発痛物質も流してくれますので、痛みが沈静化したり、疲労が回復したりします。
また、その他にも組織の温度が上げると、神経の伝達速度が早くなるとも言われています。
ぎっくり腰の時は冷やす?温める?
冷やしたり温めたりする効果についてはなんとなくわかったと思いますので、ここからは、ぎっくり腰の場合はどうしたら良いのか見ていきたいと思います。
まず結論から言ってしまうと、ぎっくり腰の場合は冷やした方が良いと思います。
ぎっくり腰になってしまった直後は、組織が引き伸ばされ、損傷している可能性がありますので、炎症を抑えるという意味でも、冷やした方が賢明です。
通常、炎症の反応は24時間〜48時間くらい強く続きますので、その時に患部を触ってみて、熱感があるようでしたら冷やしてあげてください。
もし、この時に間違えて腰を温めてしまうと、組織の炎症が余計に酷くなってしまう可能性がありますので、最悪の状態を考えて、温めるのは控えてください。
お風呂にゆっくり浸かったり、お酒を飲むことも厳禁です。
腰の冷やし方は?
腰の冷やし方としては、まずは氷嚢などを容易して頂きたいのですが、なければビニール袋を用意して、そこに水と氷を入れる形で代用してください。
時間はだいたい15分から20分くらいが目安で、そのくらいになると皮膚の感覚がなくなってくると思いますので、そうなったらアイシングを終了し、一旦氷嚢を外してあげてください。
(※凍傷の恐れもありますので、皮膚の感覚がなくならなくても、20分くらいしたら終了してください。)
その後、しばらくインターバルを置いて患部の感覚が戻ってきたら、再びアイシングを再開し、これを数回繰り返します。
(※一回だけで終わってしてしまうと、冷却による血管の拡張効果で、再び体温が上がって痛みが出てしまう可能性があります。何回か反復して行ってあげてください。)
実は現代人のぎっくり腰にはそこまで重要ではない?
上記はあくまでも一般的なお話なのですが、実はぎっくり腰になった時は、冷やすか温めるかは、そこまで重要ではないのです(注意:炎症が酷い方はしっかり冷やしてください)。
医療者の中には、「とりあえず急性のものは冷やす」という方もいるかもしれませんが、私個人の考えとしては、温めるのはリスクが高いのでやらない方が良いと思いますが、特別冷やす必要もないと思っています。
これは、「当てはまってたら要注意!ぎっくり腰の前兆って?」でも解説しましたが、ぎっくり腰には筋肉や筋膜によるものと、関節の問題によるものがあります。
肉体労働が多かった昔でしたら、組織の損傷により炎症が強くなっている事も多かったので、冷やしてあげると効果的でした。
ですが、現代人のぎっくり腰は、ほとんどが普段運動していない所に負担をかけてしまった事と、デスクワークによる体の歪みで、関節が耐えられなくなって起きています。
これらは特別炎症が起きているわけではありませんので、無理に冷やす必要もないのです。
そのため、プロ目線から言わせて頂けば、症状を改善させたい場合は、構造的に問題がある箇所にアプローチして、腰椎や筋膜の緊張を改善させた方が良いと思います。
ご自分でもある程度できる事がありますので、一度「プロが実践!ぎっくり腰で動けない時に対処法」に書いてある事を試してみてください。
症状の軽い方でしたら、これで痛みが変化してくるはずです。
もしそれでもダメでしたら、腰椎の固着や、複数の問題が絡み合っている可能性がありますので、一度当院にご相談ください。
こんな時はすぐに専門家に相談した方がいいかも
ここまで冷やす事の効果や、現代人のぎっくり腰について解説してきましたが、中には早めに専門家に相談した方が良いものをありますので、いくつか見ていきたいと思います。
お尻や仙骨周りに痛みが出ている
ぎっくり腰と似た症状で、お尻や仙骨周りに引っ張られるような痛みが出る場合があります。
こちらも分類的にはぎっくり腰?に入れてしまっていいのかもしれませんが、実は原因はまったく別の所にあったりします。
ぎっくり腰の場合は、筋膜や靭帯の損傷と関節が固まる事で起こりますが、こちらの場合は「筋膜が引っ張る」事で似た症状を出しています。
組織が損傷して痛みを引き起こしているわけではありませんので、当然患部を冷やす必要もありません。
どちらも動作時にグキッと来るので一般の方からは見分けがつきませんが、このような症状の場合は、別の対処が必要になります。
何日経ってもぎっくり腰が治らない
ぎっくり腰は、数日経てば炎症や組織の緊張が落ち着いてくるため、自然と痛みも引いてきます。
ですが、何日も症状が治らならなかったり、痛みがずっと続いているような場合は、別の問題を抱えてしまっている事が多いです。
特によくあるのが腰の痛みに対して不安や怖さが強くなっているパターンですが、心理的な緊張が強くなってしまうと、それだけでも体を固くしてしまう場合があります。
このようになってしまった場合は、当然腰を冷やすだけでは改善されません。
構造的な問題と心理的な問題が絡み合っている状態ですので、しっかりと根本にある原因を見ながら、アプローチする事が大切です。
腰痛以外の症状が出ている
急激な腰の痛みは、何もぎっくり腰だけで引き起こされるわけではありません。
内蔵の問題やヘルニアなど、通常のぎっくり腰とは別の原因から痛みに襲われる事もありますので、もし体に腰痛以外の症状が出ているなら、病院で検査を受ける事をオススメします。
特に下記に該当するような方は要注意です。
- 熱や腹痛がある
- 吐き気や嘔吐がある
- 強いしびれが出ている
- 夜中に症状が強くなる
などなど。
まとめ
ぎっくり腰になってしまった時は、組織の炎症を抑えるという意味でも、まずは患部を冷やしてあげてください。
温めることは、炎症を悪化させ、痛みを増強させてしまう可能性がありますので、リスクを控えるという意味でも、やめておいた方が良いです。
症状の改善には、腰周りの筋肉や関節の状態を把握しなければなりませんので、自分なりにいろいろ試しても症状が改善しない場合は、必ず専門家に相談してください。