足裏や踵に強い痛みを引き起こす足底筋膜炎。今回はその治し方について解説したいと思います。
あなたは「病院や治療院に通っているけどなかなか治らない」「痛みがずっと続いている」とお悩みではないでしょうか?
もしこのようなお悩みを抱えているなら、一度ケアの方法を見直してあげる必要があります。
今回はそのために必要な事として、足底筋膜炎のタイプの違いや治し方、予防法などについてまとめてみました。
タイプが違えばアプローチの仕方も変わってきますので、症状が改善しないとお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
なぜ足底筋膜炎は治りづらいの?
ではそもそも、なぜ足底筋膜炎は治りづらいのでしょうか。
その原因を一つ一つ見ていこうと思います。
常に負担がかかる
足底筋膜炎は足裏の症状のため、基本的に常に負担がかかります。
手や首の症状でしたら、「痛いからちょっと動かさないでおこう」という事ができるのですが、足裏の場合は歩かないわけにはいきませんので、負担をかけないようにする事がとても難しいのです。
その結果、日々の負担や体の問題に対して、回復量が上回ってくれないという現象がおきます。
正しく問題に対処していけば、それでも体は改善されるのですが、うまく原因部分にアプローチできていないと、「なかなか治らない」という状況になってしまうのです。
足以外の影響も大きい
足底筋膜炎は足裏に症状が現れますが、その原因は足裏だけではありません。
足底筋膜に強く負担がかかっているなら、当然ふくらはぎやアキレス腱にも問題は起きているでしょうし、アーチ機能に問題があったり関節に歪みが出ている場合は、腰や骨盤が歪んでいる可能性もあります。
足底筋膜炎を治すためには、これらすべてが正常な状態になっている必要がありますので、体の状態が改善されるまで、時間がかかってしまう事があるのです。
自分に合っていない治し方をしている
冒頭でも少し触れましたが、基本的に足底筋膜炎には2つのタイプが存在しています。
タイプが違えば治し方も変わってくるのですが、多くの方はそれを無視してしまっているため、「なかなか症状が改善しない」という状況になってしまうのです
もしあなたが「ふくらはぎをマッサージしたり、ストレッチするだけでは効果が感じられない」とお悩みなら、2つのタイプをしっかりと見極めて、足底筋膜炎に対処していく必要があります。
また、上記でも書きましたが、足底筋膜炎は他部位から影響も強く出る障害です。
痛いのは足裏だけど、実は影響しているのは腰の歪みからくる坐骨神経だった。という事もありますので、やはりお一人お一人に合った方法を選択してあげる必要があります。
インソールやアイシング、湿布と言った治療法はどうか?
足底筋膜炎の治療現場では、長らくインソールやアイシング、湿布、マッサージ、電気治療、ステロイド注射、骨棘の手術など、さまざまな治療法が用いられて来ました。
この記事をご覧になっている方の中には、これらの治療法を受けている方もいると思いますので、一つ一つ見ていこうと思います。
インソール
インソールは土踏まずが潰れてしまったり、アーチ機能が低下している場合によく用いられる方法です。
足底筋膜炎の原因が扁平足で、アーチ機能がうまく働いていないなら、インソールのサポートは痛みの改善が期待できます。
しかし、いくらインソールでアーチをサポートしても、根本的な問題解決にはなりませんので、扁平足になってしまった原因が取り除けなければ、再び痛みが出てしまう可能性もあるのです。
インソールの使用は、他の治療法と併用して行うならありだと思いますが、止めた時に再び再発しないかという問題と、足底腱膜が過度に緊張して痛みが出ているタイプには、効果があるのかという問題が残ります。
アイシング
アイシングは氷や冷却パックを用いて患部を冷やすことで、炎症を抑えたり、痛みを抑える事を目的とした処置法です。
ネットなどの情報を見ていると、足底筋膜炎には「アイシングは効果がない」とか、「余計に症状を悪化させます」という言葉を見かけますが、実はこれらはあまり正確ではありません。
アイシングはどういった場面でどういう目的で行うかによって、まったく違った結果になりますので、使い方によっては良くなる可能性もあるし、悪くなってしまう場合もあるのです。
有効的な場面としては、足を痛めてしまった直後や運動後、かかとに熱感があって炎症が起きている場合などが挙げられますが、スポーツリハビリテーションの分野では、ストレッチと組み合わせる事で(クライオストレッチ)、積極的に柔軟性を改善させるためにも用いられています。
クライオストレッチとは、アイシングとストレッチを組み合わせる事で、筋肉の柔軟性を改善するために行われるもの。
普通に考えると、冷やすと筋肉は固くなりそうですが、アイシングをすると神経の働きが鈍くなるため、ストレッチと組み合わせる事で、痛みや緊張の影響を抑えるながら、ストレッチで筋肉を緩ませやすくする事ができます。
※ただし、基本的にはこれだけで症状を治していくのは難しいので、使えそうな場面があったら、他の方法と併用するという事が必要になると思います。また、アイシングの有効性については今なお議論が続いている分野でもあります。
湿布を貼る
湿布には消炎鎮痛作用があるため、病院で処方してもらって色々な所に貼っている方も多いかもしれませんが、足裏は普段から負担のかかる部分ですので、湿布だけで足底筋膜炎を改善するのはかなり難しいと思います。
湿布の消炎鎮痛作用と、貼ったことによる安心感で多少症状は変わるかもしれませんが、足底腱膜の問題と、それが付着している踵骨付着部の状態が改善しなければ、結局の所症状は治らないと思いますので、他の療法の補助的に使うのが良いのではないかと思います。
マッサージ
マッサージは全身の状態をみて効果的に行えば、緊張型の足底筋膜炎には有効だと思います。
ただし、単に痛いところ揉んだり、心地よさを求めるためにグイグイ押すような施術は、症状を悪化させる恐れがありますので、辞めたほうが良いと思います。
施術直後は筋肉を緩んだとしても、強い刺激に対抗するために体は前より固まろうとしますので、結果として更なる緊張を招き、悪い状態を引き起こします。
また、例え筋肉が緊張していても、原因がそこにはない場合もありますので、問題を改善させるための一つの選択肢として、捉えたほうが良いと思います。
電気治療
電気治療は接骨院や整形外科でよく用いられている方法で、電気の刺激によって血流を改善させたり、痛みを緩和させる効果があると言われています。
禁忌の方以外には基本的にプラスの反応を引き起こすものですが、足底筋膜炎の改善には、足だけでなく体全体の状態がよくなっていないと難しいので、効果は限定的だと思います。
痛み止めの服用
痛み止めは、飲めば痛みが止まるため、どうしょもない状態で生活に支障をきたしているような時は、必要に応じて使ってあげればよいと思います。
しかし、これは体を治すためのものではないですし、痛み止めで痛みが止まっても、決して患部の状態が回復したわけではないことを忘れてはいけません。
よくあるパターンとしては、痛みがなくなったので安心してしまい、動いた事で患部に負担がかかり、薬の効果が切れた時に前よりもひどい状態になっていた。という事があります。
こうなると更に治りづらい状態になってしまいますし、胃にも負担をかけてしまいますので、薬に頼るのもほどほどにしないといけません。
ステロイド注射
ステロイドには炎症を抑えて痛みを取る働きがありますので、整形外科等では、足底筋膜炎の治療に、ステロイドが用いられる場合があります。
しかし、ステロイドは作用が強い分副作用も強くなるため、使用する場合は、お医者さんとよく相談して、ホントに打つ必要があるのか、慎重に検証した方が良いと思います。
骨棘の手術
足底筋膜炎の患者さんには、足底腱膜によりかかとの骨が引っ張られる事で、「骨棘」と言われる骨の出っ張りができる場合があります。
以前はこれが痛みの原因として切除手術が行われていたそうですが、現在は必ずしも痛みの原因とは言えないため、ほとんど手術されなくなっているそうです。
私自身、10年くらい前は「骨棘ができてしまったら手術しかない」と教えられて来たのですが、足底筋膜炎は腱膜が微細に断裂したり、骨との付着部で炎症が起こる事で痛みが引き起こされますので、骨棘を手術で切除しても、痛みは減らないと言われています。
足底筋膜炎の2つのタイプって?
足底筋膜炎には、足底腱膜が過度に緊張しているタイプと、緊張が低下してしてしまっているタイプの二種類があります。
一つ一つ解説していきますので、自分がどちらのタイプに当てはまるか見てみてください。
足底腱膜が過度に緊張しているタイプ
足底腱膜が過度に緊張しているタイプの方は、足底腱膜の緊張が強いため、ウインドラス機構という足のアーチ構造の働きが強まり、足底腱膜に強い牽引力をもたらします。
この牽引力は、通常レベルの緊張であれば足の安定性を助けたり、蹴り出す時の推進力になってくれるのですが、緊張が高まり過ぎてしまうと、踵と足底腱膜との付着部に負担をかけてしまいますので、何度も引っ張られる事で、組織を損傷させてしまうのです。
そのため、蹴り出し時などにかかとに痛みが出るような方は、このタイプが多いように思います。
足底腱膜の緊張が低下してしまっているタイプ
足底腱膜の緊張が低下してしまっているタイプの方は、緊張が低下し過ぎているため、トラス機構が働きづらくなってしまい、荷重をうまく分散させる事ができなくなります。
元々荷重がかかった時は、かかとの腱膜付着部に大きな力が加わります。
緊張の低下により最初から足のアーチ潰れていると、「アーチが潰れる→足底腱膜が伸びてショックを吸収」というクッション機能が働きませんので、十分にショックを吸収する事ができなり、かかとに負荷を集中させてしまうのです。
立っている時に足が痛いような方は、足底腱膜の緊張が低下している可能性があります。
足底筋膜炎の治し方
足底筋膜炎の治し方は、足底腱膜が過度に緊張しているタイプと、緊張が低下してしまっているタイプとで必要な事が異なります。
足底腱膜が緊張している方の治し方
足底腱膜が緊張しているタイプの方は、まずは足裏の柔軟性を取り戻す事が大切ですので、体全体をみて、緊張の元になっている部分を改善させてあげる必要があります。
下腿三頭筋やアキレス腱を緩める
こちらは「足底筋膜炎(足底腱膜炎)の原因と改善法について」でも書きましたが、歩行時に足底腱膜にかかる力とアキレス腱にかかる力は同じなので、アキレス腱を緩めることは、緊張タイプの足底腱膜炎を治すために効果的です。
また、アキレス腱は下腿三頭筋によって作られますので、合わせてふくらはぎの筋肉を柔らかくするために、ストレッチ等をしてあげると効果的です。
股関節周りの筋肉を緩める
股関節のバランスが悪かったり、関節に固着があると、神経の反射を介してアキレス腱が緊張してしまうため、足底筋膜炎を治すには、股関節を緩めておくことも大切です。
多くの場合、股関節の前面か後面の筋肉が固くなってしまったことでバランスを崩していますので、これらの緊張を緩めてあげれば、自然と体の状態は整います。
筋肉としては、後面の中殿筋、小殿筋、梨状筋、上・下双子筋、大腿方形筋、側面の大腿筋膜張筋、前面の腸腰筋(大腰筋、腸骨筋等)、大腿直筋、恥骨筋、長・短内転筋などをチェックする必要があります。
個人でストレッチをする場合は、大まかに前と後ろのバランスを見て、股関節のストレッチをしてあげると良いと思います。
足関節と足根骨の歪みを取る
足関節や足根骨が歪んでいると、だいたい足底腱膜も固くなっていますので、症状が出ている場合は、必ずチェックしなければいけません。
残念ながら個人の方が直接的に歪みを取る事は難しいですが、足や足底の筋肉をストレッチすることで、酷い歪みは緩和出来るかもしれません。
実際に治療現場で歪みを取っていく場合は、足に悪影響を出している部分を特定しながら、足の関節を一つ一つチェックしていき、歪んでいる箇所を整えていく必要があります。
足底腱膜が緩んでいる方の治し方
足底腱膜の緊張が低下しているタイプの方は、適度な緊張を持たせてあげる必要がありますので、足の筋力トレーニングを行う事が効果的です。
短趾屈筋のトレーニング
短趾屈筋は足底腱膜に覆われているため、トレーニングにより筋肉の緊張が高まれば、それを覆っている腱膜の緊張も高まりますので、足底腱膜炎の症状改善に役立ちます。
自分で出来る効果的な方法として、「タオルギャザー」と言われるタオルを用いた方法が簡単だと思います。
やり方としては、床にタオルをおいて、その上に足を置き、指でタオルをたぐり寄せるだけです。
足裏の筋肉が発達している方はなんてことない動作かもしれませんが、そうでない方はうまくタオルをたぐり寄せる事が出来ず、結構苦戦するのではないかと思います。
長足底靭帯の機能正常化
長足底靭帯は足の裏にある靭帯で、アーチを保持する機能を持っていたり、荷重がかかってる部分でもあります。
ここの機能が正常に働いていると、足底腱膜にかかる負担を長足底靭帯でもさばいてくれますので、結果として、足底腱膜にかかる負担を減らせる可能性があります。
個人で出来る方法としては、足底板やテーピングで補強してあげる事ですが、足根骨が歪んでいるような方は、そこを治して機能を正常に働かせてあげる方がよいと思います。
歪みが気になるような場合は、一度専門家に診てもらうことをオススメします。
どちらのタイプにも共通して必要な事
どちらのタイプにも共通してですが、腰から足にかけての歪みを整えておく事と、神経の働きを正常にしておく事は必要です。
これは固くなってしまった足底腱膜を緩める事にもつながりますし、緊張が低下してしまったタイプの場合は、トレーニングで歪んだままバランス悪く筋力を付けてしまうよりも、正しい状態でトレーニングをしてあげた方が、のちのちの事を考えると遥かに効果的です。
全部挙げると大変なので一部しか紹介できませんが、腰椎、股関節、下腿骨間膜、足関節、足根骨、坐骨神経(脛骨神経、内側・外側足底神経等)などは、チェックしていた方が良いと思います。
自分でケアしても症状が改善しない場合は?
上記で紹介した方法を試したり、自分でケアしても症状が改善されない場合は、問題が難しくなっている可能性がありますので、無理して悪化させないうちに、一度治療院にご相談頂ければと思います。
人によっては足だけではなく、思わぬ所に原因が潜んでいる場合もありますので、構造的な部分だけでなく、運動量や生活習慣、心理的面なども含めて、適切な方法を選択していく必要があります。
足底筋膜炎を予防し再発させないようにするには?
足底筋膜炎は結構再発してしまう方もいますので、ここでは再発防止のために必要な事をいくつか解説していきたいと思います。
筋肉を柔軟に保つ
先程も解説しましたが、下腿の緊張は足底に負担をかけますので、足底筋膜炎を予防するなら、日頃から筋肉を柔軟に保つ必要があります。
方法はストレッチなどでも良いと思いますが、下腿の緊張は坐骨神経や腰・股関節の影響も受けますので、疲れがたまっていると感じたら、プロのケアを受けることも大切です。
アーチ機能を低下させない
アーチ機能の低下は、直接足底筋膜に負担をかけます。
足関節や足根骨に歪みが出やすい人は、定期的に体を整えてもらうしかないのですが、筋力の低下によりアーチが潰れやすいような方は、トレーニング次第で良い状態を保てますので、上記で紹介したように、「タオルギャザー」を試してみてください。
定期的に体の歪みを整える
足裏にかかる荷重は、なにも足だけでさばいているわけではありませんので、定期的に骨格の歪みを整え、体全体で負担をさばけるようにしておく必要があります。
これは高いレベルで競技を行うスポーツ選手だけでなく、一般の方でもある程度は必要です。
自力でなんとかするのは難しい領域でもありますが、不良姿勢や仕事で座りすぎが続くと、確実に体は歪んでしまいますので、定期的に状態は整えてあげる必要があると思います。
負担のかかるフォームを修正する
体の状態を調えても、フォームが悪くて足に負担がかかっていると、再び足底筋膜炎になってしまう恐れがありますので、注意してください。
特に着地をしたり地面を蹴る時に、荷重のかかる方向と足の向きがズレていたりすると、負担は増大してしまいます。
再発させないためにも、新たな怪我を防ぐ意味でも、負担のかからないフォームを作っていくしかありませんので、コーチや指導者の方とよく相談して、自分のフォームを見直してみてください。
運動時はテーピングを行う
テーピングは、完全に症状が落ち着いていて、全身のバランスも取れているなら特に必要はないと思いますが、ちょっとでも不安が残っている場合は、事前貼ってあげると効果的です。
特に下記に該当するような方は、痛みがなくてもまだ油断してはいけませんので、運動時はテープピングの使用も考えたほうが良いと思います。
- 足裏やふくらはぎがまだ固い
- アーチ機能の問題が残っている
- 腰や骨盤が歪んでいる
- 坐骨神経が緊張している
- 全身のバランスが悪い
- 復帰後初めて運動する
- 復帰後初めて試合に出場する
など。
テープとしては、キネシオテープ、伸縮性のテープ、非伸縮性のテープといろいろありますが、基本的にはキネシオテープや伸縮性のテープで良いと思います。
非伸縮性のテープを使って、アーチや踵の衝撃を緩和するために行う方法もありますが、動きを強く制限してしまう事もありますので、激しいコンタクトスポーツ以外は伸縮性のあるもので良いと思います。
テーピングの貼り方に関しては、こちらページでまとめてありますので合わせて参考にしてみてください。
まとめ
足底筋膜炎には、足底腱膜が過度に緊張してしまったタイプと、緊張が低下してしまったタイプの二種類が存在します。
過度に緊張しているタイプの方は、足底腱膜を緩める事が大切ですので、まずはどこが緊張を引き起こしているのか見極め、問題箇所を治していく必要があります。
緊張が低下してしまったタイプの方は、足裏や足関節周りの筋肉を鍛えて、足底腱膜の緊張を取り戻す必要がありますので、今回紹介したタオルギャザーを試してみてください。
実際に症状を改善していくためには、上記だけではなく、腰や神経の状態など、体全体を良い状態に保たなければいけませんので、足底筋膜炎が治らなくて困っているなら、一度当院にご相談頂ければと思います。