現代人にとって身近な存在と言える腰痛。あなたは腰痛になってしまった時に、どう対処すればよいのかちゃんと知っているでしょうか?
多くの方は正しい知識がないために、目先の情報に流されてしまい、適切な行動が取れていません。
そのため、なかなか腰痛が治らず、つらい思いをしてしまっているのですが、正しい対処法を身につければ腰痛に苦しむ事も減るはずです。
今回は知識ゼロでも大丈夫なように、腰痛の対処法と治し方を6つの項目に分けて解説してみましたのでご覧ください。
そもそも腰痛とは?
それでは、実際に腰痛の対処法を見ていく前に、「腰痛とは何か」という部分をしっかりと確認しておきたいと思います。
厚生労働省のホームページではこのように定義されています。
「腰痛」とは、疾患名(病気の名前)ではなく、腰部を主とする痛みやはり等の違和感、不快感といった症状の総称で、労働者に発生する腰部の痺痛等は「職業性腰痛」若しくは単に「腰痛」と呼称されています。
職場のあんぜんサイト:腰痛予防[安全衛生キーワード]|厚生労働省
ここからもわかるように、腰痛とは腰回りに起きた様々な症状の総称です。
人それぞれ違った症状、違った問題を抱えていますので、当然腰痛を治していく際も、一人ひとりに合った方法を選択する必要があります。
次の項目から。実際に自分の状態を分析し、対処していくまでの流れをまとめましたので、参考にしてみてください。
1.腰の状態を確認してみよう
腰痛にしっかり対処するためには、まずは自分の状態を知る事が大切です。
ひとえに「腰痛」と言っても、腰にどのような問題があるのかわからなければ、いくら素晴らしい治療法があっても使い所がわかりませんし、そもそもどのような病院や治療院に行けば良いのかもわかりません。
自分の体を把握することが腰痛対処の第一歩ですので、まずはここを丁寧に行っていきましょう。
どのような症状が出ているのか確認しよう
今あなたが抱えている症状は、どのようなものでしょうか?
腰の痛みやしびれ、張りなどでしょうか?それとも、まったく別の感覚でしょうか?
腰痛で悩んでいるのだから腰の痛みでしょ?と思う方もいるかもしれませんが、人によって「腰痛」というものの認識は違います。
実際私が見た患者さんの中でも、「痛み」以外にも「張り」や「重さ」、「だるさ」などを「腰痛」という言葉で表現している方がいらっしゃいました。
これが治療者と患者さんとの間でミスマッチを生む要因なのですが、症状が違えば対処の仕方も違ってきますので、まずはあなたが抱えている症状が、どのようなものなのか明確にしていきましょう。
人によっては、複数の症状が複合している場合もあります。
どうすると症状は強くなる?
どうすると症状が強くなるのか(または弱くなるのか)分析することは、体に起きている問題を特定するためにとても大切です。
あなたの症状は、どのように動かすと強くなるでしょうか?
腰をかがめる、反る、横に倒す、捻るなどの動作をしてみて、自分の腰がどのくらい動くのか、またどのくらい動かすと痛みが出るのか確認してみましょう。
問題がいくつも存在していると、どの動作をしても痛みが出てしまう場合もありますが、そんな時は「痛みの強弱」「痛みの場所」に注目してみてください。
動きによってこれらが変化するなら、あなたの腰痛は筋肉や腰の椎間関節、神経等の問題によって、引き起こされている可能性が高いです。
もし、「どんな動きをしても痛みが変化しない」と感じるなら、内臓や心理面の問題から腰痛が引き起こされている可能性がありますので、一度病院で検査を受けることをオススメします。
痛みが出る場所は?
上記のように体を動かした場合、どこに痛みが出るでしょうか。
痛む場所はどこなのか、痛みは点で感じるのか、それともある程度の範囲で感じるのか。これがわかるだけでも、かなり問題が絞れます。
たまに、問診で「全部痛い」と答える方がいるのですが、全部が痛いと腰周りの筋肉や神経、関節などをすべて調べないといけませんので、それだけ症状の改善は遅れます。
だいたい骨盤の上のライン(腸骨稜)を基準にしてもらって、そこからどのくらいの位置に症状が出るのかわかるだけでも、原因の特定には役立ちます。
左右の腸骨稜を結んだ線をヤコビー線というのですが、その線の少し下から上にかけて、背骨の近くに痛みが出ている時は、腰椎周りに何かしらの問題が起きている可能性があります。
ヤコビー線よりある程度下だったり、体の中心から離れた位置に痛みが出る場合は、臀部や股関節周り、下肢に問題がある可能性が高いです。
実際の臨床現場では、腰椎に症状が出ていても、それを引き起こしている原因が別の場所に存在している時もあります。
例:「股関節の硬さが腰椎に歪みを引き起こしている」など
つらい時と楽な時は?
腰の痛みがいつ強くなるのかわかると、腰痛を対処するのに役立ちます。
朝と夜ではどうか、1週間のうちではいつが1番辛いのか、感じてみてください。
朝痛みが強い方は、腰椎の椎間関節に問題のある可能性が高く、時間の経過と共に症状が弱くなっていくなら、運動を取り入れると効果的です。
仕事終わりや夕方、週終わりに症状が強くなってくるなら、疲労による腰痛と考えられますので、脊柱起立筋や腰方形筋、腸脛靭帯や臀部周りの筋肉等に、問題が起きている可能性が高いです。
日中の過ごし方を見直し、疲れを翌日に持ち越さないようにケアしてあげると良いと思います。
・脊柱起立筋とは
背中を骨盤から頭の方まで縦に走る筋肉の事。腸肋筋、最長筋、棘筋という筋肉で構成されていて、背中を反らす作用がある。
・腰方形筋とは
骨盤から腰の骨や一番下の肋骨に付着する筋肉。腰を横に曲げたりする作用がある。
・腸脛靭帯とは
骨盤から下腿にある腓骨という骨に付着する靭帯で、大腿筋膜張筋と大殿筋が合わさって出来たもの。
週初めに辛くなるなら、休日の過ごし方が問題になっている可能性がありますので、後で紹介する「腰痛を悪化させる行動」を参考にしてみてください。
基本的に、365日どんな時も同じように痛む人はいませんので、筋骨格系による腰痛であれ、内臓疾患からの腰痛であれ、痛みが強い時と弱い時の差が出るはずです。
しかし、腰痛を長く抱えていると、痛いのが当たり前になってしまい、実際は痛みに変化が起きていても、痛くない時(症状が弱い時)に気付けない場合もあります。
ここまでになってしまうと、問題が複雑になり「私は治らないんだ」という信念を強くしてしまいますので、早い段階で見直してあげることが大切です。
※夜中に痛みが強くなる場合は、red flagsと言われる重篤な脊椎疾患のサインですので、すぐに病院に行って診察を受けてください。
重篤な脊椎疾患(腫瘍、炎症、骨折など)の合併を疑うべきred flags(危険信号)
- 発症年齢 20歳未満または55歳歳以上
- 時間や活動に関係のない腰痛
- 胸部痛
- 癌、ステロイド治療、HIV感染の既往
- 栄養不良
- 体重減少
- 広範囲に及び神経症状
- 構築性脊柱変形
- 発熱
2.腰痛の原因を考えてみよう
腰痛になった原因がわかると、その後や対処や治療に役立ちますので、まずは自分なりに、腰痛の原因を考えてみてください。
中には「よくわからない」という方もいるかもしれませんが、原因が明確でなくても、「自分が何を原因と思っているか」がわかるだけでも、慢性腰痛の治療には役に立ちます。
腰に負担をかけた、重いものをもった
重いものを持ったり腰に負担をかける事が多いと、筋肉が硬くなったり、関節が固まる事で腰痛を引き起こす場合があります。
腰に強い力がかかると、靭帯や関節包(関節を包む膜)が引き伸ばされるため、危険を察知した体は反射的に体を保護しようと働き、関節を固めます。
固まった関節は、通常であれば自然と元に戻るのですが、何らかの要因で固まったままだと、体を動かす時にうまく関節が動かないので、腰に痛みを引き起こすのです。
これは繰り返される動作でも起きますし、一瞬の強い力でも起きます。
また、無理な姿勢で重いものを持ち上げたり、瞬間的に力が加わると、筋肉が引き伸ばされる力に耐え切れなくなり、組織が損傷して痛みを出す場合もあります。
同じ姿勢が多い(座りすぎ、立ちすぎなど)
長時間同じ姿勢で座っていると、腰の5番目と4番目の関節が固くなり、腰椎が固着する場合があります。
固着してしまった腰椎は、関節が動かない状態になっていますので、動き始める時に組織が刺激され、痛みを引き起こします。
筋肉面で見ると、第1腰椎〜第3腰椎の周りに負担がかかりやすく、脊柱起立筋や腰方形筋は緊張が出ている場合が多いです。
座っているのが辛くなったり、姿勢を変えないと耐えられなくなったら、もう腰が限界になっているサインですので注意してください。
また、立ち仕事をされている方も腰痛になりやすいと言えます。
腰や骨盤に歪みがなく、左右均等に体重がかけられるならよいですが、少しでもバランスが崩れていると、片側にだけ体重がかかり、臀部周りの筋肉や腸脛靭帯などが固くなるため、結果として骨盤を歪めます。
骨盤の歪みは、腰椎や胸椎、頚椎などの歪みで代償しなければいけませんので、1番負担のかかる腰に痛みを引き起こすのです。
座り過ぎが原因になる方 → パソコンや事務作業の多い方、ピアニストなど
立ちすぎが原因になる方 → ガードマンや教員、ヴァイオリニストなど
姿勢が悪い
日常生活で姿勢が悪い方も、腰に負担をかけ、腰痛になる可能が高いです。
背もたれのある椅子によりかかっていたり、猫背の状態で座っている方、日常的に脚を組んでいる方などは、骨盤が後傾し、腰椎の湾曲(前弯)を失わせるので、腰に痛みを引き起こしやすくなります。
この状態は、椎間板に後方への圧力をかけますので、何度も繰り返していると、腰痛だけでなく、椎間板ヘルニアの危険性も増しますので注意が必要です。
関節部分で見ると、関節は開いた状態で固まっていますので、閉じるような動き(腰を反らすような動作)をすると、関節がうまく動かないため、痛みを引き起こします。
運動不足が続いている
体をあまり動かさない人は、定期的に体を動かしている人より、腰痛になる可能性が高いと言えます。
特に、今はデスクワークの方が多いので、必然的に体を動かす時間は昔の人より減っているはずです。
仕事をしているだけでもどんどん関節や筋肉は固くなりますので、ウォーキングやランニングのように、全身をゆっくり使うような運動をして、関節が固まるのを防ぐ必要があります。
※筋力トレーニングや競技レベルでの運動は、現代人の腰痛には効果がありませんし、症状を悪化させる可能性があるので注意が必要です。
スポーツをして痛くなった
スポーツで痛くなった場合は、主に「急に動いて痛めた」のか、「繰り返しの運動によって痛めた」ものの2つのパターンが考えられます。
一般の方で多いのが急に運動を始めた場合で、負担に体が耐えきれず、筋肉を損傷させたり、使ってない筋肉を使った事により筋肉痛になっている場合です。
これらは時間が経てば自然と症状が消えるものですので、重症化していない限り心配はありません。
しかし、繰り返しの運動によって痛めたものは(プロアスリートや定期的に運動をする方に多い)、一回の力はそれほど大きくなくても、繰り返すうちにダメージが蓄積したり、そのスポーツ特有の運動で、体のバランスが崩れている場合があるので注意が必要です。
- 腰を反る運動が多く腰椎に負担がかかるもの → バレーボール、水泳のバタフライ、体操選手など
- 腰を回転させる運動が多く、腰椎を捻じれ歪ませるもの → 野球、ゴルフなど
- 下肢から股関節を酷使し、腰に負担をかけるもの → サッカー、テニスなど
- 外力がかかり、様々な組織にダメージを受けるもの → サッカー、アメリカンフットボール、ラグビーなど
原因がない
腰痛の原因を考えてみても、特に思いつくものがないなら、自分が普段「普通」だと思っている行動に、問題は潜んでいる可能性があります。
現代人の場合、「何かの動作で痛めた」というより、特にこの「なんとなく腰が痛くなってきた」という方が圧倒的に多いです。
何も要因がないのに痛みが出るわけはないのですが、瞬間的に痛めたわけではなく、徐々症状が進行しているため、負担のかかっている行動に気づけません。
このような場合は、なかなか自分で原因を見つけられませんので、専門家に見てもらいながら、負担のかかっている行動を特定していく必要があります。
3.腰痛を治しにいこう
ここまでで、かなり自分の体についてわかったきたと思いますので、今度はその情報を元に腰痛を治しに行きましょう。
整形外科などに行った方が良い場合
- ぶつけたり衝撃を受けて痛くなった
- 腰痛と共に強いしびれがある
- 咳・くしゃみで痛みが増す
- 夜中に強い痛みが出る
- 排尿・排便が困難
上記に該当する場合は、骨折や重度のヘルニア、ガンなど、重篤な疾患の可能性がありますので、整形外科などを受診してください。
内科などに行った方が良い場合
- じっとしていても痛い
- 下痢や嘔吐・腹痛がある
- 発熱がある
- その他内科系の症状
上記の場合は、内科系疾患の可能性がありますので、内科などを受診してください。
当院のような治療院で対応できるもの
- スポーツによる腰痛
- 動かすと腰が痛い(反ったりかかんだりなど)
- 病院で問題無しと言われた
- 慢性的な腰痛
- 重労働や動いた後に痛みが出た
- 長時間同じ姿勢をしていて痛くなった(座りすぎ等)
- 歪みが腰痛を引き起こしていると思われるもの
- その他原因がわからないもの
上記に該当する場合は、施術によって症状が改善する可能性がありますので、一度当院にご相談頂ければと思います。
どのような治療院に行けば良いのかわからない場合は?
いざ治療院を探すと言っても、ぞれぞれの手技療法には得意な分野と不得意な分野がありますので、自分の腰痛原因に適した方法を選択する必要があります。
筋肉の問題を抱えている方でしたら、マッサージや鍼灸などで対応可能かと思いますが、関節に問題が出ている方は、カイロプラクティックやオステオパシーのように、関節にアプローチ出来る方法が良いと思います。
しかし、実際はこれらの問題だけでなく、様々な要因が入り組んで症状を作っているので、難しい腰痛の場合は、何か一つの方法だけに固執するのではなく、様々角度から体を見てあげる事が大切です。
※当院の場合は、筋骨格だけでなく、心理面やエネルギー的な側面も含めて、体を様々な角度から見られるという点で、オステオパシーの考え方を取り入れています。
賢く病院や治療院を受診するポイント
多くの患者さんを見ていると、上手く自分の症状が説明出来ないために、治療場面で損をしてしまっている方が見受けられます。
その原因の多くが、「辛かったり大変だったという自分の感情だけを伝えてしまう事」や、「説明するのが面倒くさくて大雑把に答えてしまう事」で引き起こされています。
確かに自分の症状を伝えるのは大変ですし、準備のない状態でいきなり医療者の前に行ったとしても、なにを言っていいのかわからないのは当然の事です。
しかし、それだけでやり取りが終わってしまうと、医療者側は必要な情報がしっかりと取れませんし、患者さん側も適切なアプローチを受けることができないため、結局損をしてしまうのは患者さん本人になってしまいます。
ちょっとしたポイントがお互いに共有できるだけでも、遥かに治療がスムーズに進みますので、病院や治療院にかかる時は、必ず自分の今の状態と、思い当たる原因を伝えてみてください。
4.痛みの原因箇所を知っておこう
上記で「当院のような治療院で対応できるもの」に該当したような方は、筋膜や靭帯、心理面などから腰痛が引き起こされている可能性が高いため、自分の問題箇所を知っておくと、症状の改善にプラスに働きます。
腰椎椎間関節の歪みや緊張
腰椎の間にある関節(椎間関節)に負担がかかり、靭帯や関節包が固くなってしまうと、腰椎が歪んだり、痛みの原因になる場合があります。
重労働の方でしたら、腰に衝撃が加わった事でこれらに負担がかかりますが、現代人のようにデスクワークが多い方は、同じ姿勢でずっと座っている事で、腰痛になる場合が多いようです。
実際ここに問題が起きてしまうと、例え今は痛みが出ていなかったとしても、背骨や骨盤全体の歪みにつながりますので、次第に体のバランスを崩し、結果として酷い腰痛を引き起こします。
改善のためには、治療院で直接調整してもらうのが1番なのですが、こまめに歩いたり、座り過ぎに注意するなど、自身でのケアも必要です。
股関節の固さやバランスの悪さ
股関節がスムーズに動かなくなっていたり、前後のバランスが崩れてしまうと、骨盤を介して腰椎を歪めてしまうため、腰痛を引き起こしてしまう可能性があります。
こういった方の場合、例え腰に歪みや固さが見られたとしても、大本の原因はそこにはありませんので、いくら腰を治療したとしても症状の改善は望めません。
改善させるためには、股関節周りの固着や、前後の筋力バランスなどをチェックする必要があるのですが、慢性化していたり、長いこと腰痛を抱えている方は、腰と股関節の両方に問題が起きているので注意が必要です。
下肢筋膜の緊張
腸脛靭帯やハムストリングスなどの筋膜は、骨盤や腰にまでつながっているため、緊張したり柔軟性を失ってしまうと、腰を引っ張る事になってしまい、痛みを引き起こします。
特に仙骨周りに痛みが出るような方はこのパターンが多く、特定の動作や角度で強く筋膜が緊張しますので、痛みで動けなくなってしまったり、「ガクッとして動けない」というような事が起こるのです。
これらの緊張は、下肢のストレッチやマッサージなどである程度緩められるのですが、痛みと対応している筋膜を見極めないと効果がない場合もありますので、改善が見られない場合は、やはりプロに相談した方が良いかと思います。
内臓からの関連痛
内臓周りの筋膜や靭帯、間膜に問題が起きると、内臓の機能が正常に働きづらくなるため、関連する神経に緊張を引き起こします。
この緊張は、内臓体制反射という反射を介して体表に伝わるので、腰周りに緊張が伝われば、実際は内臓に問題があったとしても、「腰の痛み」として認識されます。
問題が腰にないため、いくら腰を治療しても、痛みが取れる事はないのですが、「内臓が問題」という事を知らない方も多いため、結構見過ごされている場合も多いです。
腰痛に対する不安や恐怖感
これは後に解説する「心理的な癖を見直そう」で詳しく書いている部分なのですが、腰痛は心理面の影響も強く受ける事がわかっています。
そのため、腰痛に対して不安や恐怖心があると、痛みを助長させたり長期化させてしまう恐れがあるので、アプローチする際は筋骨格だけでなく、心理面のケアも必要になってきます。
5.腰痛を悪化させる行動を見直そう
腰痛を治すためには、腰の負担となる行動を見直す必要もあります。
姿勢を気にしたり、重いものを持たないようにする事はわかりやすいのですが、普段自分が気付いていない所に思わぬ問題は潜んでいますので、客観的に見てあげる事が大切です。
同じ姿勢を続けない
同じ姿勢を続けていると、体の同じ部分に負担がかかるため、次第に体が歪み、腰痛を引き起こす場合があります。
特に座りすぎは厳禁で、歪んだ状態で1時間でも座っていれば、すぐに腰椎は固まりますので、こまめに体を動かすようにしてください。
重い物を持つ時は足を使う
重い物を持つときは、楽をして腰から曲げるのではなく、必ず足を使って持ち上げるようにしてください。
いくら体が丈夫な人でも、腰だけで持てば必ず腰痛になりますので、足を使い、負担を減らすことが大切です。
こちらの動画では、上記のほかにも「荷物の近くに立つ」「お腹に力を入れる」などの正しい荷物の持ち方がわかりやすく解説されていましたので、合わせてご覧になってみてください。
片側で荷物を持たない
肩掛けバッグや片方の手でずっと重いものを持っていると、体が傾きますので、バランスを取るために腰椎が側屈したり回旋します。
同時にものを持った手と反対の中殿筋や腸脛靭帯が緊張しますので、腰の捻じれと筋肉の緊張が合わさり、腰痛を引き起こす場合があります。
可能であればリュックなどの左右均等に負担のかかるものが良いですが、難しければ左と右で交互に持つことで、疲労を分散させると良いです。
ズボンのポケットに財布や携帯電話を入れない
男性の場合、ズボンのポケットに財布や携帯電話を入れている方が多いと思うのですが、これらは骨盤や腰椎を歪める可能性がありますので、辞めたほうが賢明です。
実際こんな事で体が歪むの?と思う方もいるかもしれませんが、動く時や座る時の抵抗になりますので、毎日繰り返していれば、必ず体は歪みます。
足をなるべく組まない
足を組むと歪みそうなのはみなさんも想像出来ると思いますが、いざ組まないようにしていても、疲れてくると何気なくやってしまうのがこれの厄介な所です。
完全に止めようと思っても、無意識のうちに組んでしまうものですので、もし足を組んでいる事に気づいたら、その後は必ず姿勢を治したり、歩いて体をリフレッシュさせる事が大切です。
また、本人は足を組んでいる自覚がなくても、周りから指摘されて初めて気づく方もいますので、もし歪みが気になっているなら、周りの方に聞いてみるのも有効だと思います。
ヒールやかかとの高い靴を履かない
女性の場合、体よりオシャレが優勢されてしまう事がありますが、かかとの高い靴は骨盤を歪め、腰椎に負担をかけてしまいますので、腰痛に悩んでいるなら止める事をオススメします。
特にヒールを履いた状態ですと、つま先立ちしているような姿勢になりますので、腰椎が前弯し(反り腰)、胸椎の後弯と頚椎の前弯を強めます。
この状態は、通常より腰の関節に負担をかけますので、長く続ければ必然的に腰に痛みを出します。
それでもどうしてもヒールを履かなければいけない方は、その分体のメンテナンスに時間を割くしかありません。
体を捻った状態で作業しない
体を捻った状態で作業をしていると、腰椎が捻じれた状態で固まりますので注意してください。
特にデスクワークをしている方は要注意で、パソコンのモニターが真正面にないと、長時間ずっと体を捻って座ることになりますので、次第に腰が歪み腰痛になる恐れがあります。
自分だけの空間ではないので仕方ない部分もありますが、可能ならば環境を改善した方が良いと思います。
安静にし過ぎない
腰を痛めないためには「安静にしている方が良い」と思っている方がたまにいますが、慢性化した腰痛に関しては逆効果です。
安静にし過ぎると動く必要がなくなった関節は固まり始めますし、毎回同じ箇所に負担がかかるので、結果として腰痛を悪化させる恐れがあります。
最初は不安があるかもしれませんが、腰を痛めてからある程度時間が経っているなら、積極的に体を動かす方が腰痛改善には役立ちます。
6.心理的な癖を見直そう
痛みは「痛みの刺激+不安や恐怖」で作られるものですので、その人がどのように痛みを感じるのか、またどのようにつらさを捉え、不安や恐怖を感じるのかは、その人の心理的な部分が大きな影響を及ぼします。
最近の研究で、痛みの長期化(慢性化)に「脳」が大きく関わっていることがわかってきました。
脳にはもともと、痛みを抑える鎮痛の仕組みが備わっているのですが、慢性腰痛の人ではその仕組みが衰えていることがわかってきたのです。
これらが偏ったままですと、腰痛が治るのを妨げるだけでなく、痛みも必要以上に増大させてしまいますので、以下に挙げるポイントを改善の参考にしてみてください。
※最近の研究では、認知行動療法などの心理療法が、腰痛治療に効果的であることがわかっています。
必要以上に痛みを探さない
状態把握のために痛みを確認する事は必要ですが、それが癖になっているような方は、腰痛に囚われてる状態ですので、すぐにそれをやめてください。
多くの患者さんは、だいたい下記のような流れを通ります。
腰の状態に不安があるので確認して安心したい
↓
確認すると痛いので、不安になったり落ち込む
↓
再度安心するために痛くないのを確認し出す
↓
痛みが出るので再び不安になり落ち込む
↓
自分の腰痛は治らない、ずっと腰が痛いと思い込み始める
人間は、見たいものしか見られない性質がありますので、痛みを確認することが癖になっていると、必然的に痛みにしかフォーカスできない状態になります。
そのまま痛みを探し続けていると、365日24時間ずっと痛みが出ているような誤った錯覚に陥りますので、次第にメンタル的に落ち込み、治りづらい腰痛を作ってしまいます。
1回で治そうとしない
1回で治そうとしている方は、基本的に即効性を求めていますので、一発で腰が治る以外は「駄目」という認識を持っています。
このような方は、例え症状が変化していても「良くなっている」と気付かなかったり、良い治療法に巡り会えても満足できないので、しっかり治るまで治療を継続しない恐れがあります。
その為、いつまでも1回で治せる治療院を探し回るのですが、残念ながら今このブログを読んでいるような方の腰痛は、ほとんどが1回では治りません。
実際1回で済むのは軽い腰痛だけですので、本人が気づくまで、何年も同じことを繰り返してしまいます。
過去や未来にとらわれない
過去痛かった記憶を引きずっていたり、将来痛くなりそうという不安を抱えていたりすると、現在の状況を無視して思考だけが先行してしまいますので、次第に今体がどうなっているのかわからなくなってしまい、負のループにハマります。
こうなってしまうと、一種のトランス状態になってしまいますので、まるで催眠術でもかかったかのように自分で自分の首を絞め始めます。
ですが、過去の体は誰にも治療する事は出来ませんし、未来は訪れてみないとわかりません。
大切なのは今この瞬間に体がどうなっていて、それをどう感じているかですので、現実ではない思考領域で格闘する前に、「今はどうなのか」感じてみてください。
常に痛い、全部痛いで語らない
これは先程も少し述べた事ですが、「常に痛い」と思っている方は、基本的に痛くない時間を見ていませんし、「全部痛い」で症状を語る方は、痛くない所を見ていません。
このような認識のパターンを持っている方は、痛くない時もあるし、痛くない所もある現実を認識していませんので、他の方よりも症状を強く感じてしまい、精神的につらい思いをすることがあります。
もし今これを読んでみても、やっぱり「全部痛い」「常に痛い」と感じている方は、重篤な疾患の可能性もありますので、病院で検査をしてもらったり、心理領域のプロに相談する必要があります。
思い込みをやめる
思い込みは良い方に働けば強烈なパワーとなりますが、マイナスに働く場合は心身に大きな負担をかけ、腰痛が治る道を遠ざけます。
特に多いのが、「自分の腰痛は治らない」と思い込んでいたり、「痛い所を強く押せば良くなる」というパターンです。
これらは詳しく聞いていけば根拠が薄い事が多いのですが、過去の体験やメディアの情報から本人が強烈に思い込んでいるため、他人が指摘してもなかなか改善は望めません。
もし、あなた「腰痛が治らない」と思い込んでいるなら、一度「腰痛が治らない原因と対策」を読んでみてください。参考になる部分が多いと思います。
全ての患者さんが治るとは言えませんが、改善される方も多いはずです。
また、強く押されれば治ると思い込んでいるなら、実際に強く押してくれそうな所で、気の済むまで施術を受けてみてください。何ヶ月経っても腰痛が治らなかったり、症状が悪化するようなら、やはりその方法は間違っていると言えます。
これ以外にも思い込みが症状を固着させてしまう事がありますが、大切なのは一つの考えだけに決めつけず、柔軟性をもって対応することだと思います。
原因探しをやめる
初期の段階では、問題把握のために原因を考える事も大切です。
しかし、慢性化した腰痛や、ある程度時間が経った場合は、さまざまな要因から症状が作られていますので、原因を探すより、自分の出来る事を考える方が効果的です。
それでも原因だけを追い求めていると、どんどん疑わしい物が増えてしまい、結果として自分を縛る事にもなってしまいますので注意してください。
当院では、治療する時に「これは辞めたほうが良い」という部分だけは指摘させて頂きますが、それ以外は普通に生活してもらっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は腰痛の対処法として、原因把握から治し方までを6つのステップに分けて解説してみました。
普段治療に通っている方は知っている事も多かったかもしれませんが、細かく自分の状態を知ることと、心理面や日常生活面に目を向けることは、腰痛を治す上でプラスになるはずです。
腰の具体的に治療法については、「患者さんがどう行動するか」という部分に焦点を当てたので原因箇所の解説にとどめましたが、腰周りの筋肉だけでなく、椎間関節や股関節の問題、筋膜の緊張と、さまざまな角度から体を見ていけば、自ずと症状は変化していくと思います。
症状が慢性化していたり、複雑化している方は治るまでに時間がかかるかもしれませんが、ぜひ紹介した6ステップ参考にしてみてください。