手軽にできる腰痛解消法の一つに、「ツボを刺激する」という方法があります。ツボは、正式には東洋医学で「経穴」という名称があるのですが、この経穴、うまく使うと、腰痛にとても効果があるのです。
腰は痛いけど病院に行くほどでもなかったり、自分でどうにかしたいと考えている方は、ぜひ当サイトで紹介するツボを試してみてください。
なぜ腰痛にツボが効果的なの?
ツボ刺激には、以下のような効果があると言われています。
血流を改善
ツボが刺激されると、ポリモーダル受容器と呼ばれるセンサーが興奮するのですが、この興奮は、反射的に血管を拡張させますので、組織の血流が増加し、痛みの原因である発痛物質を流してくれます。
自律神経の働きを調整
ツボの刺激は、自律神経にも大きな影響を及ぼします。
ツボが押されると、近くにある神経が興奮するのですが、その刺激が脳の自律神経をコントロールしている部分にも伝わるの事で、反射的に神経の働きが調整されます。
自律神経のバランスが安定すると、内臓の働きが正常になったり、筋肉の緊張なども取れてきますので、腰痛の緩和につながる場合があります。
経絡の流れが整う
経絡とは、簡単にいうと全身を流れるエネルギーの通り道なのですが、ここの流れが滞ると、体のバランスが崩れるため、不調になると言われています。
そのため、反応の出ているツボを刺激してあげると、エネルギーの滞りが解消されるので、体のバランスが整い、症状の改善につながる可能性があるのです。
ツボの刺激の仕方
まずはツボの刺激の仕方ですが、これは指でも棒でも良いと思います。自分が心地よいと思うくらいの強さで刺激してあげてください。
だいたい1回3秒ほど、ゆっくりと繰り返しながら刺激してあげると、少しずつ体がほぐれていくのが感じられると思います。
ぎっくり腰のように、急に腰を痛めたものでなければ、ツボの部分を温めても良いと思います。
注意点
よく、心地よいからと言って、強さを求めてグリグリ強く押す方がいますが、それは逆効果です。下手したら余計痛めてしまう恐れがありますので、絶対にやめてください。
特に、骨に障害がある人や、背骨自体になにか問題ある人(脊柱管狭窄症や変形性脊椎症など)は、注意が必要です。
腰痛に効くツボ14選
今回は、腰痛に効果のあるツボを、西洋医学的、東洋医学的視点から、紹介していこうと思います。
※イラストは、大まかなツボの位置を示しています。
脾兪(ひゆ)
名前からすると脾臓に関係するのかな?と思う方も多いと思いますが、脾兪は胃や消化器系にも効果的なツボです。腰背部の腱膜上のツボですので、腰の上の方に問題がある時に使用する場合があります。
場所:背中の骨の11番目(第11胸椎)と、12番目(第12胸椎)の間指2本外側
胃兪(いゆ)
胃兪はその名の通り、胃に対して効果のあるツボです。脾兪と効果的には似ていて、共に腰背部にあるため、腰と背中の境目辺りが辛い時には刺激してあげると効果のあるツボです。
場所:背中の骨の12番目(第12胸椎)と、一番上の腰椎(第1腰椎)の間指2本外側
三焦兪(さんしょうゆ)
三焦兪は三焦を整える大切なツボです。三焦は東洋医学的な概念なので、今回は割愛しますが、内蔵の機能や変化を総合してそう言っていると思ってもらえれば、だいたいいいと思います。
場所:腰の1番目の骨(第1腰椎)と、2番目の骨(第2腰椎)の間から指2本外側
腎兪(じんゆ)
腎兪は特に腰痛の時に大切なツボと言えます。
解剖学的には、腰の筋肉や関節などに関係があるので、腰痛の時は使用したいツボですが、そればかりでなく、元気の源にも関係すると言われています。
東洋医学的には、腎虚の状態(腎の力が弱い時)には、腰痛になりやすいと言われています。ですので、腎の関係する腎兪は、大切なツボだと言えます。
場所:腰の2番目の骨(第2腰椎)と、3番目の骨(第3腰椎)の間から指2本外側
志室(ししつ)
志室は、上記の腎兪からさらに外側に行ったところにあるツボです。
深部に腰方形筋という筋肉があったりするので、特に腰痛を抱えていなくても、この辺は押すと痛みがあります。
場所:腰の2番目の骨(第2腰椎)と、3番目の骨(第3腰椎)の間から指4本外側
大腸兪(だいちょうゆ)
大腸兪は、大腸に関係する時に使われるツボでもありますが、腰の4番目と5番目の骨の間に位置するため、腰痛の時には特に大切なツボです。
腰痛の患者さんを見ていると、第4腰椎や第5腰椎が硬くなることで、上の方も歪ませている方が多く見られますので、大腸兪や、次に紹介する関元兪は、ぜひ覚えておきたい所です。
また、この辺りの腰からは、足の方に行く神経が出ているため、下肢に痛みがある方、座骨神経痛を抱えている方にも効果的なツボです。
場所:腰の4番目の骨(第4腰椎)と、5番目の骨(第5腰椎)の間から指2本外側
関元兪(かんげんゆ)
関元兪は、大腸兪の下にあるツボです。腰の1番下の骨と、仙骨との間に位置するツボのため、解剖学的視点から腰痛には重要です。
関元兪の近くにある関節(腰仙関節)が硬くなると、足や背中にも悪影響を及ぼす可能性がありますので、注意したい所です。
場所:腰の5番目の骨(第5腰椎)と、仙骨の一番上の突起の間から指2本外側
胞肓(ほうこう)
胞肓はおしりにあるツボで、中殿筋や大殿筋という筋肉がある所に取ります。
中殿筋は、特に腰痛に関係するため、腰が痛むときにはおさえておきたいツボです。うまく当たれば、足の方にまで響くような感覚が得られると思います。
場所:仙骨の真ん中にある2番目の突起から、下外方に指4本外側
委中(いちゅう)
膝の裏側にある委中には、膝窩動脈や脛骨神経が通っています。下肢背面の筋肉が集まっているポイントで、筋膜は腰の方にも影響を及ぼします。
神経的に腰に関係するだけでなく、下腿の方に行く神経が通っていますので、座骨神経痛にも効果があるツボです。
学校では、「腰背は委中に求む」という事で、腰背部の疾患の時に使うツボとして習います。
場所:膝を曲げた時に出来る横線の中央(膝の裏側)
承筋(しょうきん)
承筋はふくらはぎにあるツボで、腓腹筋の真ん中にあります。
足が緩むと腰も楽になる場合があるので、覚えておくと良いと思います。こちらも腰痛と共に、坐骨神経痛の時にも使われるツボです。
場所:ふくらはぎの最も盛り上がった所で、内側の筋肉の束と外側の筋肉の束の間に取る。
環跳(かんちょう)
環跳は骨盤の外側にあるツボで、中殿筋や大腿筋膜張筋という筋肉があるポイントです。
中殿筋や大腿筋膜張筋は、股関節や骨盤のバランスに関係してくるので、他のツボと併用すると、腰痛を緩和させるために効果的です。
腰痛を長く抱えている方、長時間立っている仕事をしている方などは、この辺がガチガチになっているはずです。
場所:骨盤の外側にある出っ張り(大腿骨大転子)の前上方陥凹部。
風市(ふうし)
風市はモモの外側にあるツボで、腸脛靭帯という長い靭帯のある所に取ります。
腸脛靭帯が硬くなってしまうと、腰や股関節に悪影響を及ぼしますので、立ちっぱなしや座りっぱなしが多い方は、特に抑えておきたいツボです。
場所:立った状態で手のひらを腿の外側に当て、中指の先端がある所。
太谿(たいけい)
太谿は、腎経という腎に属する経絡にあるツボです。
東洋医学的には、腎は腰と関係があると言われていて、腎の力だ弱まると(腎虚)、腰痛を引き起こします。
場所:内くるぶしとアキレス腱の間の陥凹部(ちょうど後脛骨動脈という動脈が通る所にです。)
復溜(ふくりゅう)
復溜も腎経のツボで、弱っている腎を補うという意味で、腰痛の時に使ってあげると良いと思います。基本的に現代人は腎虚の人が多いと言われていますので、太谿と合わせて使用すると良いと思います。
場所:太谿の上指3本の所
番外編
こちらは私の臨床経験上あまり使用した事がないのですが、腰痛に効果があるツボと言われていますので、合わせて紹介しておきます。
腰痛点(腰腿点)
腰痛点は手にあるツボなのですが、「腰の痛い時の点」ということで、やはり腰に関する疾患に効果があると言われています。
実際、私も学校の授業で腰痛点に鍼をさしてみた事があるのですが、私個人としては、効果はよくわかりませんでした。周りにいた同級生は「楽になった」と言っていたので、効果があるのかもしれません。
場所:手の背面、2、3番目の中手骨の間、4,5番目の中手骨間の下側陥凹部。(二点あります)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は14+1個ほど腰痛に関係するツボを紹介してみました。
実際の治療現場では、これ以外にも症状を見ながらさまざまなツボを使用します。全部上げると大変な数になってしまうので、経絡的、解剖学的視点から15個におさえてあります(殿圧というツボも効果的ですが、自分で使うのは大変なため割愛しました)。
腰痛の諸症状は複雑で、単純に「このツボを押せば腰痛はよくなる」というものはありませんので、治療に関しては「プロが教える腰痛をしっかり治すための6ステップ」で紹介させて頂きました。
しかし、ツボもうまく使えば症状を緩和できると思いますので、ご自分でいろいろ組み合わせて試してみてください。