グロインペイン症候群の症状と治し方・リハビリ

スポーツ障害

あなたは多くのサッカー選手を悩ませる、「グロインペイン症候群」というスポーツを障害を知っているでしょうか?

スポーツをやっていて股関節周りに痛みが出ているなら、もしかしたらあなたの症状は、グロインペイン症候群かもしれません。

なかなか治りづらい疾患でよく知らない方も多いと思いますので、今回はグロインペイン症候群の症状と治し方についてまとめてみました。

グロインペイン症候群とは?

グロインペイン症候群は別名鼠径部痛症候群とも言われ、キックやランニングなどの動作時に、股関節周りに痛みを引き起こす症状の事をいいます。

参照:「鼠径部痛症候群」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる

私自身、学生時代にサッカーで股関節痛を経験しましたが、当時はグロインペイン症候群という名前すら知らなかったため、今股関節周りの症状で悩まれている方も、結構知らない方が多いと思います。

グロインペイン症候群の症状とは?

症状としては、動作時に、主に鼠径部周りに痛みが出てきます。

僕が高校時代に経験したものは鼠径部痛だけでしたが、下腹部や坐骨に出る痛みも、グロインペイン症候群に含まれます。

具体的に症状が出る場所としては、下腹部、鼠径部、坐骨部、睾丸後方、内転筋近位部で、人によっては、痛みでボールを蹴ることも困難になってしまう場合があります。

どのようなメカニズムで起こるの?

一般的には、股関節や体幹周りの緊張や筋力低下と、不自然な動作などによって、筋肉や関節の柔軟性が低下したり、骨盤・股関節まわりの安定性や連動性が失われる事で、症状が引き起こされると言われています。

中には怪我や捻挫などがきっかけになる場合も多く、症状が慢性化してしまうので、治るまでに時間がかかり、多くのスポーツ選手を悩ませているのです。

実際、鍼灸院や整体院にもこういった方がいらっしゃるのですが、私が臨床で見た経験から言うと、グロインペイン症候群には、上記の問題に加えて、キックやジャンプなどの動作も、症状の発症に深く関わっていると思われます。

サッカーなどのスポーツでは、どうしても足をスイングしたり体幹を反る動きが多いため、動作を繰り返すたびに、股関節の周りの筋膜が引き伸ばされる事が多くなります。

引き伸ばされた筋膜は、反動で縮まろうとしますので、上記の動作を繰り返していると、股関節周りの筋膜に問題が起きてしまい、痛みが生じてくるのです。

グロインペイン症候群を治すにはどうすればいいの?

グロインペイン症候群を治すには、日頃からのケアとしっかりとした施術、スポーツ動作に合わせたアスレティックリハビリテーションの3つが、大切なポイントになってくると思います。

以下にいくつか紹介しようと思います。

痛みを引き起こしている原因の分析

まずは、何が原因で痛みが出ているのか、しっかりと体を分析していきましょう。

サッカーで股関節に痛みが出る原因って?」でもいくつかご紹介しましたが、股関節前面筋膜、中殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、腸脛靭帯・大腿筋膜張筋、内転筋、骨盤・腰椎、捻挫や怪我のアライメント異常など、軽く挙げるだけでもかなりの数がありますので、患部だけをみるのではなく、体全体を見て、原因を特定して行くことが大切です。

実際はさらに全身のバランスや心理的緊張、キネシオロジーで問題が出ているものも含めて、体を見ていかなければなりません。

方法としては、痛みの出る動作や可動性から原因部分を導きだしても良いと思いますが、筋膜の連続性や全身の歪みなどから、問題点を把握しても良いと思います。

施術を受ける

グロインペイン症候群の施術は、局所の状態把握と全身のバランスを診ながら行わなければいけませんので、症状で悩んでいる場合は、一度専門家にご相談する事をオススメします。

全ての方に万能に効く方法はありませんので、筋膜の問題でしたら筋膜に適した方法でアプローチしないといけませんし、神経の問題ならそれに適した方法を選択する必要があります。

当院では、オステオパシーなどの考え方をベースに全身をみて施術を行っていますが、患部だけをみるのではなく、全身を診てくれる所に行くのがオススメです。

放置された捻挫や怪我に対するアプローチ

グロインペイン症候群は、足首の捻挫や肉離れなどが要因で体のバランスを崩し、そのままプレーすることで股関節周りに負担がかかり、症状が引き起こされるとも言われています。

捻挫を経験している方は、症状が落ち着いても足に歪みが残っている場合がありますし、肉離れの方も、回復していても筋膜上には捻じれが残っている場合があります。

痛みが落ち着けば治っているように感じてしまいますが、これらの問題は股関節の負担になる場合がありますので、出来る限り取り除いてあげる事が大切です。

可動域の改善

股関節痛を抱えている方は、可動域がかなり低下している恐れがありますので、施術と同時に、こちらも改善させてあげる必要があります。

個人で出来る範囲としては、股関節周りのストレッチを心がけて頂くのが大切です。

施術としては、臀部周りの筋肉、股関節屈筋群、大腿筋膜張筋に腸脛靭帯などをみていく必要がありますが、他部位からの補正もありますので、全体のバランスを見ながら患部にアプローチする必要があります。

筋肉の柔軟性を改善

トップアスリートはどのような選手も筋肉の質がとても良いですが、激しい動きの中で競技を行っていますので、グロインペイン症候群のように股関節に痛みが出てしまうと、柔軟性が失われてしまう場合があります。

アプローチ方としては、筋肉の反射を利用したり、筋膜問題を解決することで柔軟性を改善させてあげると良いと思いますが、ご自身でもトレーニングの後に、疲労がたまらないようにマッサージやストレッチ等で、ケアをしてあげる必要があります。

※基本的には、施術の過程で柔軟性の改善も同時に行っていきます。

全身のバランスを改善

原因部分を施術して、柔軟性や可動域等が改善されたら、今度は体全体のバランスを整えて行く必要があります。

実際の施術では原因へのアプローチと平行して行っていきますが、体のバランスを取れていると、治癒力が発揮されやすくなるばかりでなく、負担も少なくなってくれるため、大切です。

当院では、筋膜の緊張や骨格の歪みを見ながら全身のバランスを整えて行きますが、ただ筋力バランスを整えるというレベルではなく、筋肉、骨格、エネルギー体、前後上下のバランスなど、多層的に体が整えていかなければなりません。

協調性のトレーニングを行う

サッカーは足をメインに使うと考えがちですが、何かの動作を行う時は、体幹を含め、上半身との連動が大切です。

特に体の連動性が悪く、上半身と下半身をバラバラに使っているような人は、股関節に多大な負荷を抱えてしまう恐れがありますので、改善させてあげる必要があります。

サッカーの動作は、基本的に対角線の動きが多いので(ランニングやキック動作)、連動していないと力がうまく伝わりませんので、対角線を意識したトレーニングも必要になります。(その他体幹のトレーニングも大切です。)

効果的と思われる体幹トレーニング

①バッククロスクランチ


床によつん這いで手をつき、右手を前にあげると同時に左足を後ろへ伸ばし5秒ほどキープ。その後肘と手をくっつけるようにしてまた5秒キープ(反対も)

②片足サイドブリッジ


横向きで床に寝て、肘を曲げた状態で右手の前腕で体を浮かせ、前腕と右足で体を支える。同時に左足を外側に開く。(反対も)動画では更に負荷をかけて足を回していますが、まずは同じ姿勢をキープする所から初めてください。

③スイングサイドブリッジ
サイドブリッジの状態で、体がぶれないように足で前後にスイングをする。

④クロスクランチ


腹筋をしながら右膝と左肘を近づける。

⑤連動Vクランチ
床に寝た状態で右足の膝を立て、右腕を上に伸ばし左足も伸ばす。手と足を伸ばした状態で腹筋動作を行う。

必要によってフォームの改善

足や股関節だけでキック動作を行っているような人は、股関節周りの組織に負担をかけていますので、症状を治すためにも、ふたたび痛めてしまわない為にも、フォームを修正してあげる必要があります。

右足でボールをキックするなら、左腕や肩胸の開き、背骨の反り、軸足の踏み込みから体重を乗せた溜めなど、うまく動きが連動している必要がありますので、一度自分のシュートフォームを見直してみてください。

ただ筋トレすることはNG

ただでさえバランスが崩れた状態なのに、その状態で偏ったトレーニングをしてしまうと、余計に体のバランスを崩す恐れがあるので、注意してください。

患者さんの中には、筋力を鍛えれば効果があると思ってマシーンでガンガン体を鍛えている方がいますが、体の筋力バランス等を見てトレーニングしないと、余計股関節に負担をかける事にもなるので、気をつけた方がよいと思います。

まとめ

グロインペイン症候群は鼠径部痛症候群とも言われ、ランニングやキック動作で、股関節周りに痛みが出る症状の事をいいます。

サッカー選手に多いスポーツ障害で、キック等の反復動作や、股関節周りの柔軟性・安定性が低下する事で引き起こされますが、治りづらいため、多くのスポーツを選手を苦しめています。

症状をしっかりと治していくためには、日頃からケアと構造的な部分の改善、アスレティックリハビリテーションが必要になってきますので、プロの手を借りて、総合的に体を改善していくのが良いのではないかと思います。