サッカー選手に多い股関節の痛み。中田英寿や中村俊輔と言った超一流の選手たちを悩ませてきたこの問題は、どのような原因で引き起こされるかご存知でしょうか?
実際僕も高校時代に股関節痛を経験しましたが、当時は走るのも辛いしキックは出来ないしで、苦痛の中サッカーを続けていたのをよく覚えています。
今思えばちゃんと原因を把握して対処していれば、痛い中大変な思いをしなかったと思いますので、今回はサッカー選手によく起こる股関節痛の原因についてまとめてみました。
サッカーで股関節が痛む原因は?
股関節はどのようなスポーツでもよく使う部分ですが、その中でもサッカーの場合は、走る、蹴る、飛ぶと言った動作の中に、複雑な動きや捻じれ、相手からの接触に地面からの影響と、様々ストレスがかかります。
単純にキックだけとっても、振りかぶって股関節を反らすと共に、インサイドやアウトサイド、浮き玉の処理など、キックのたびに違った動きが要求されるため、股関節には毎回複雑なストレスが加わってしまいます。
体が絶好調なときはこれらの問題もうまいこと処理してくれるかもしれませんが、疲労が溜まっていたり、筋膜や筋肉の緊張、腰・骨盤の歪みなどが加わると、体が負荷をさばけなくなるため、股関節に痛みを引き起こします。
これらの要因はかなりいっぱいあるのですが、ここではその中でもよく見るものを幾つか紹介したいと思います。
股関節前面筋膜の緊張
サッカーはキックやジャンプの動作が多いため、「体を反る」という動きが要求されるのですが、この反る動きは、体前面の筋膜を一時的に引き伸ばします。
引き伸ばされた筋膜は、通常であれば元に戻るものなのですが、何度も繰り返しの動作が加わってしまうと、反動で収縮しようとしてしまい、体前面の筋膜に緊張を引き起こします。
緊張した筋膜は、キックなどで振りかぶる時に動きの邪魔をしてきますので、うまく反らす事が出来ず、股関節に痛みを引き起こす場合があります。
中殿筋の緊張
サッカーをやっている人の体を見ていると、ほぼ確実に緊張を出しているのがこの中殿筋です。
中殿筋は大腿部を外側に動かすような動きで使われる部分ですが、立っている姿勢を維持するためにもかなり使われますので、サッカー選手のように長時間走ったり止まっているを繰り返している人は、この部分が疲労しています。
中殿筋は股関節の安定性に関わってきますので、ここに問題が起きれば、股関節痛を引き起こす場合があります。
大腿四頭筋上の筋膜緊張
大腿四頭筋は股関節を曲げたり膝を伸ばす時に使う部分ですので、サッカー選手は基本的にこの部分が発達しています。
通常であれば柔軟な筋肉がスポーツ時に力を発揮してくれる所ですが、何かの拍子で筋膜上に緊張が出てきてしまったり、筋膜同士の癒着のようなものが作られると、股関節に悪影響を及ぼす場合があります。
ハムストリングスの緊張
ハムストリングスは大腿四頭筋と逆で、股関節を伸展させたり、膝を曲げる時に主に使われる筋肉です。
大腿四頭筋同様、ハムストリングスが緊張していると、骨盤の前後バランスを崩す場合がありますので、そこに位置する股関節は、影響を受けてしまう場合があります。
腸脛靭帯・大腿筋膜張筋の緊張
腸脛靭帯や大腿筋膜張筋の緊張も、股関節には悪影響を及ぼします。
多くの方は、股関節を曲げると痛いとか、伸ばすと痛いというように、どちらかの動作で痛みが出ている場合が多いのですが、どちらに動かしても痛みが出るような方は、腸脛靭帯と大腿筋膜張筋に、問題が起きている可能性があります。
また、人によっては神経上の筋膜に浮腫のようなものを作ってしまい、筋膜を歪ませている場合もあるので注意が必要です。
内転筋の緊張
僕の臨床上の経験では、腸脛靭帯等の問題よりも数が少ないですが、やはり内転筋の問題も、悪影響を及ぼす場合があります。
内転筋が過度に緊張してしまうと、骨盤を内側から引っ張ってしまう事にもつながりますので、骨盤が傾き、股関節の不安定性が高まります。
腰や骨盤の歪み
股関節は寛骨という骨盤の骨と、大腿骨によって作られていますので、腰や骨盤に歪みが出てしまうと、股関節自体のバランスを崩し、痛みが出てしまう場合があります。
特に長くサッカーを続けて来たような方は、だいたい体に偏りが出てきていますので(利き足等の関係も含め)、歪み方も単純ではなく、腰椎の固着と股関節の固着などが混ざり合い、複雑に歪んでいる場合が多々あります。
捻挫や怪我後のアライメント異常
捻挫や怪我を経験した方の多くは、アライメントと言われる骨の配列に、異常をきたしている場合が多いです。
アライメントが崩れていると、構造的上体にかかる負担をうまく捌くことが出来なくなるため、1番ストレスのかかる部分に、問題を引き起こします。
特に股関節は下肢の動きの中心となる部分ですので、足首や膝などにアライメント異常がある方は、症状を出してしまう場合があります。
すり減ったスパイクを使い続ける
僕も学生時代はすり減ったスパイクを使っちゃっていましたが、片側がすり減ったスパイクを使い続ける事は、関節的に歪みを作ったまま動いている事と同じですので、場合によっては、股関節に問題を引き起こす場合があります。
スパイクは結構高いものでもありますので、なかなか頻繁に買い換える事は難しい場合もありますが、成長期のお子さんなどには特に注意して頂きたいところです。
サッカーによる股関節痛を改善するには?
サッカーによる股関節痛を改善するには、日頃のケアと、構造的な問題の改善が必要になります。
日頃のケアとしては、ストレッチやマッサージなどを自分でして、疲労を溜めないようにすることも大切ですが、チームにスポーツトレーナーのような方がいる場合は、その方と協力して、コンディションを整えてあげると良いと思います。
構造的な部分の改善としては、まずは何が原因で股関節に痛みが起きているのか、その原因を作っているのは何なのかを、分析していく必要があります。
股関節周りの筋力バランス、下肢の筋膜問題、腰痛の固着、骨盤の歪み、アライメントの問題などを、一つ一つ見ていく必要がありますので、自分でストレッチなどをしても症状が改善されないなら、一度ご相談頂ければと思います。
まとめ
サッカー選手は走る、飛ぶ、蹴ると言った動作に加えて、様々なステップやキックを行わなければいけないため、股関節を痛めやすく、症状も治りづらい場合があります。
主な原因は、股関節周りの筋膜や筋肉の問題、アライメントの問題。腰、骨盤などの歪みから引き起こされますが、実際の現場では、もうちょっと複雑に、問題を把握して行かなければなりません。
運動をやっている場合、どうしても股関節には負担がかかってしまうので、日頃のケアが欠かせませんが、自分でのケアに限界を感じているなら、一度プロに相談することをオススメします。