足底筋膜炎は治りづらいスポーツ障害と言われていますが、あなたは足底筋膜炎の本当の原因をご存知でしょうか?
多くの方は「歩きすぎたから?」とか「運動しすぎたかな?」と思っているかもしれませんが、これらは一つの要因にしか過ぎず、実はもっと複雑な原因が潜んでいるのです。
実際足裏やかかとが痛い時に「足底筋膜炎です」と言われても、なぜこんなに痛くなってしまったのかわからなければ対処のしようがないと思いますので、今回は足底筋膜炎の原因と改善法についてまとめてみました。
足底筋膜炎とは?
足底筋膜炎とは、マラソンランナーなどによく見られるスポーツ障害で、ランニングやジャンプなどの動作を繰り返すことで、足底腱膜に伸張ストレスが加わり引き起こされます。
歩行時や蹴り出しの時などに腱の付着部辺りに痛みが出る事が多く、負担のかかりやすい部分でもあるため、なかなか治りづらいという特徴を持っています。
よく、足底腱膜炎と足底筋膜炎はどう違うのですか?と聞かれますが、これらはどちらも同じ状態を指しています。
足底筋膜炎の原因とは?
足底筋膜炎の原因は、一般的には特定の動作を繰り返し行うことによって、足底の腱膜が引き伸ばされ、腱が付着している組織に炎症や変性が生じ、痛みが引き起こされると言われています。
しかし、実際にはそれだけではなく、様々な要因が足底筋膜炎の引き金になっていますので、いくつか原因になりそうなものを挙げてみようと思います。
足底腱膜の過緊張
これは以下に挙げるアーチ機能の低下やアキレス腱の問題、坐骨神経の緊張なども関係してくる部分ですが、足底腱膜が緊張していると、蹴り出しなどの動作時に、かかとの付着部に強い牽引力が加わるため、組織に損傷を生じさせ、足底筋膜炎を引き起こします。
これらはスポーツ選手によく見られるものですが、純粋に足底腱膜だけが固くなっている方は稀で、多くの場合、下腿や股関節など、他の部分も固くなっているので、治りづらく、何度も同じ症状を繰り返します。
足底腱膜の緊張低下
上記で足底腱膜の過緊張は問題だと書きましたが、実は緊張が低下し過ぎても、足底筋膜炎は引き起こされてしまうのです。
足底腱膜は足にかかる荷重を分散させるという役目もあるため、緊張が低下し過ぎてしまうと、うまく力を分散させる事が出来ず、負担の集中した部分に痛みを引き起こします。
特に立っている時に足裏が痛いような方は、足底腱膜の緊張低下が疑われます。
アーチ機能の低下
アーチ機能が低下しても、足底筋膜炎の原因になる可能性があります。
人間の足には、荷重をうまく支えるために3つのアーチ構造が存在しています。
一つが踵骨、距骨、舟状骨、内側楔状骨、第一中足骨から作られる内側の縦アーチ。俗にいう土踏まずという所です。
二つ目が踵骨、立方骨、第五中足骨から作られる外側の縦アーチ。
三つ目が内側・外側・中間楔状骨、立方骨、5本の中足骨からなる横アーチ。結構縦のアーチはご存知の方が多いですが、実は足には横にもアーチ構造が存在しています。
扁平足やハイアーチなどになりアーチの機能が低下してしまうと、ショックを吸収するためのスプリング機能が正常に働かなくなるため、荷重の影響をダイレクトに受けた部分で組織が損傷します。
アキレス腱の緊張
アキレス腱はふくらはぎにある下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)によって作られる人体最大の腱なのですが、実はアキレス腱と足底腱膜は筋膜構造でつながっているため、アキレス腱の緊張は足底腱膜に伝播します。
構造的にみても、アキレス腱が固くなるとかかとを上に牽引してしまうため、足底腱膜がくっついている部分も自ずと引っ張られる形になり、伸ばされ足裏に過緊張を引き起こします。
実際の患者さんを見てみても、足底腱膜が硬ければだいたいアキレス腱も固いですし、アキレス腱に問題があれば、足底腱膜にも緊張が見られるため、症状が出ている場合は、かならず下腿の状態もチェックしなければなりません。
かかとの脂肪減少
人間の足裏には、衝撃を吸収するために、2cmくらいまでの脂肪層が存在しています。
これらは蜂の巣状になっていて、荷重がかかってもズレないようになっているのですが、年齢を重ねていくと、これらの柔軟性が低下してしまい、脂肪層が薄くなってしまうと言われています。
基本的には加齢が原因と言われていますが、若年者の方でも、慢性的に足底筋膜炎を引き起こしているような場合は、脂肪体が薄くなっている場合があるそうです。
アライメントの異常
足に問題がある方はかなりの割合でアライメントの異常を抱えているのですが、異常なまま放置していると、足裏に負担がかかり、足底筋膜炎になってしまう可能性あります。
よく見られるものとしては回内足・回外足があるのですが、これらは様々な要因で踵骨が傾いてしまった状態なので、このような異常をお持ちの方は、踵骨に付着している足底腱膜にも何かしらの悪影響が出ているはずです。
回内足で言えば、踵骨が内側に傾いた事によって土踏まずのアーチが下がりやすくなってしまうため、足裏にかかる荷重をうまくさばくことが出来ず、足底に痛みを引き起こします。
回外足の場合は、踵骨が外側に傾いた状態になっているため、ハイアーチなどになりやすく、足のスプリング機能がうまく働かないため、負担がかかり足底を痛めます。
また、過去に捻挫をした経験などがあると、足根骨が歪んでしまっている可能性もあるので注意が必要です。
坐骨神経の緊張
坐骨神経とは、腰から足まで続く長い神経の事なのですが、ここが緊張してしまうと、ふくらはぎの筋肉やアキレス腱、下腿骨間膜、足根骨のアライメント、足底の筋肉などに悪影響を与えるため、負担のかかり方によっては、足底腱膜炎の原因になってしまいます。
また、足底筋膜炎とは少し違いますが、患者さんによっては、神経が緊張したことで神経の出口に浮腫みたいなものが出来てしまい、歩行時に痛みが出るため、「足底筋膜炎なのではないか?」と治療院を訪れる方もよくいます。
腰や骨盤の歪み
腰や骨盤の歪みを抱えていると、上記で紹介してきた様々な問題を引き起こすため可能性があるため、注意しなければいけません。
患者さんを見ていると、足に問題があってこれらが歪んでいないという事はほとんどありませんので、腰と骨盤の歪みを整え、神経の働きを正常化させ、バランスの良い体を保たなければなりません。
足底筋膜炎の改善に必要な事は?
足底筋膜炎の改善に必要な事は、まずは上記で上げた原因を取り除く事と、運動のコントロール、ストレッチや筋力トレーニング等のケアが必要になってきます。
治療を関しては、「足底筋膜炎が治らない人に知ってほしい正しい治し方」を合わせてご覧ください。
足底筋膜炎の原因を取り除く
上記で上げた原因のうち、構造的な問題の多くは施術によって改善させる事が可能なので、症状でお悩みの場合は、一度当院にご相談頂ければ思います。
たまに、足底筋膜炎が治らなくて何年も抱えているような方がいらっしゃいますが、そのような方はだいたい足裏だけ治療して他の部分に手を付けていなかったり、ちゃんと原因を把握していないため適切なアプローチが取れていなかった可能性がありますので、体全体をみて、一人ひとりに合った方法を選択する必要があります。
運動量のコントロール
足底の腱膜は荷重によって引き伸ばされるため、症状を改善させるには、運動量のコントロールが必要です。
運動量のコントロールというと、「絶対運動しちゃ駄目だ」と勘違いされる方もいますが、決してそういう事ではありません。
症状を良くするためには、安静にしすぎる事も問題になってしまいますので、極力足に負担をかけないようにしながら、体を動かしてあげることが大切なのです。
足の負担を減らす方法としては、テーピングやサポーターの仕様が考えられます。
もちろん酷い状態が落ち着いてからになりますが、軽く動ける状態になっているなら、これらを仕様して足の負担を減らしてあげてください。
筋力トレーニングとストレッチ
上記で足底腱膜やアキレス腱の問題を紹介しましたが、症状を改善させるためには、筋力トレーニングやストレッチが必要になる場合もあります。
足底腱膜の緊張が低下していたり、扁平足気味になっている方は筋力トレーニングが必要ですし、足底腱膜が緊張していたり、アキレス腱や下腿三頭筋などに問題を抱えている方は、ストレッチを心がけてあげる必要があります。
もちろん症状が落ちてからの話になりますが、これらを行うことで、足の状態を整えてあげることは大切なのです。
※大前提として、症状の改善が見られ、体のアライメントや神経などが正常化している必要があります。
まとめ
足底筋膜炎(腱膜炎)は、ランニングやジャンプなどの動作を繰り返す人に多く、運動時にどうしても伸張ストレスがかかってしまうため、治りづらいという特徴を持っています。
原因としては、足底腱膜の過緊張や緊張低下が主なものですが、そうなってしまった要因として、アライメントの異常やアーチ機能の低下、腰や骨盤の歪みに神経の緊張などが関係していると思われますので、これらの異変が見られる場合は、早めの対処が必要となります。
症状を改善させるためには、足裏だけを治療するのではなく、足底筋膜炎を引き起こしている原因を取り除きながら、全体をみてアプローチして行く必要があると思います。