ピアノの弾き過ぎで手首が痛い時の原因と対処法

手首の痛み

「ピアノの弾き過ぎで手首が痛い」あなたはこんなお悩みを抱えていないでしょうか?

ピアニストの方なら誰もが経験あるかもしれませんが、手首の痛みは痛くなったときにすぐ対処をしないと、悪化してしまい、演奏に支障をきたしてしまう恐れがあります。

負担のかかり方やその人の癖、体にどのような問題が起きているかによって対応の仕方も変わってきますので、今回はピアノの弾き過ぎで手首が痛い時の原因と対処法について解説しようと思います。

手首が痛くなった原因は?

それでは、実際にピアノの弾き過ぎで手首が痛くなってしまう原因とは何なのでしょうか。
一つ一つ解説していこうと思います。

腱鞘炎になっている

ピアノの弾き過ぎでまず考えられるのが、この腱鞘炎です。

腱鞘炎は手の使いすぎで起こりますので、ピアノのように指や手首を酷使することが多いと、腱が炎症を起こしてしまい、腱鞘炎になってしまう場合があります。

腱鞘炎とは、手首や指を使いすぎる事によって、腱と腱鞘と言われる腱を包んでる鞘状の部分が擦れ合うことによって、患部に炎症と痛みが起きることをいいます。

これが手首の親指側で起こればドケルバン病と呼ばれますし、指の腱鞘炎が進行して酷くなると、「ばね指」と言われる状態になったりします。
腱鞘炎とは|手首や指の腱鞘炎の治し方

腱鞘炎になってしまったとしても、手を使わなければすぐに症状は落ち着いてくるのですが、ピアニストの方は練習を続けなければいけませんので、炎症が起きている所に無理を重ねてしまい、症状をひどくさせてしまったり、演奏に支障をきたしてしまう場合があるのです。

手の筋膜が固くなっている

人間の体は「筋膜」という膜で覆われているのですが、手を酷使し続けていると、疲労がたまり、筋膜が固くなってしまうため、手首を動かす時に痛みを出す場合があります。

筋膜とは?
筋膜は筋肉を包む膜ですが、細かいところでは筋繊維を、大きなところでは体全体を包む膜です。

それらの筋膜はある一定の法則に従い連結しあい3次元的なバランスを保っています。そのため、筋膜の一部に機能障害が起きると、離れた部位の機能に影響を及ぼすこともあります。

筋膜とは? | トリガーポイント™ 公式サイト

これは演奏の癖や、手の使い方によっても変わってくるのですが、鍵盤を叩く時に手首を反らせる事が多かったり、手のひら側が引き伸ばされる事が多いと、

①手首を反らせる事が多い

②手のひら側が引き伸ばされる事が多い

反動で前腕の屈筋群や手のひらの筋膜が緊張する場合が多いです。

反対に、鍵盤をたたく時に強い力を入れていたり、手首を曲げるように叩く事が多いと、

①指に強い力が入る事が多い

②手首を曲げる事が多い

反動で前腕の伸筋群や手首の甲側の筋膜が緊張する事が多いです。

このように緊張してしまうと、手首を動かす時に筋膜が引っ張ってしまいますので、関節に過度の負担がかかり、痛みを出す場合があります。

もちろん筋肉を収縮させた事で、動作と同じ側の筋肉が固くなる事もあります。ピアニストのように腕を酷使する方は、同側の筋肉の緊張と反対側の筋膜の緊張が、どちらも起きている場合もあります。

神経が緊張している

手には3つの大きい神経が通っているのですが、神経が緊張していても、痛みが引き起こされる場合があります。

ピアノは座った状態で手を動かすため、首や背中周りがガチガチになりやすく、固くなった胸椎や頚椎は、神経を圧迫することで、神経全体を緊張させます。

そこに加えて、手や腕周りもかなり疲労しますので、さらに神経が過敏になってしまい、手首に痛みを引き起こす場合があるのです。

こうなってしまうと、ひどい人は指が鍵盤に触れるだけでも痛く感じてしまう事もあるのですが、悪くなっている部分が広範囲に渡っているため、手首だけ治せばいいというわけにはいかなくなります。

ピアノで手首が痛い時の対処法

ここでは、手首が痛くなってしまった時に、自分でできる対処法を紹介しようと思います。

大事なポイントは、まずはこれ以上負担をかけないようにする事と、体の状態をみて、起きている問題を解決していく。という事です。

練習と休息のバランスを取る

手首が痛いときに大切な事は、やはり休息をしっかりと取り、手を休める。という事です。

今の状態は練習が過度になり、手首が耐えられない状態になっていますので、積極的に休息を取り入れ、手首が回復する時間を作ってあげてください。

人によっては、「練習しないと弾けなくなるかも」と不安に感じてしまう方もいるかもしれませんが、痛い状態で無理に練習しても良い演奏はできませんし、さらに体を悪くしてしまう恐れもあるので注意が必要です。

この辺は何度も経験してわかる部分かもしれませんが、施術者側から言わせていただくと、演奏していて、手に違和感や張り感を感じ始めたら、もう一呼吸置いた方がいいと思います。

焦る気持ちはあるかもしれませんが、さらなる損傷を招かないためにも、手が痛くなってきたら、しっかりと休息を取ってあげてください。

アイシングをする

これは腱鞘炎が起きている時にやってあげた方が良い事なのですが、手首が痛くなり、熱感が出ているような場合は、組織に炎症が起きている状態ですので、氷袋などを用意して、手首をアイシングしてあげてください。

これだけでは根本的な解決にはなりませんが、アイシングをしてあげるとひどい炎症が続く事は減ると思いますので、症状の緩和につながる場合があります。

定期的なメンテナンスを心がける

手に痛みが出てしまう方の場合、基本的に手だけ悪くなっているという事は稀で、ほとんどの方が肘や胸椎、神経など、さまざまな場所に問題を起こしています。

実際、そこが悪くなっていると気づいていない人も多いのですが、これらの部位が悪くなっているからこそ、手首が痛くなりやすくなってしまうので注意が必要です。

メンテナンスでは、体の状態を整える事で、「手首が痛くなりづらい状態」を作って挙げる事が大切ですので、プロに施術をしてもらい、体の状態をケアしてあげてください。

疲労をためない

腕や手に疲労がたまってしまうと、筋肉や関節が固くなり、演奏時のスムーズな動きを妨げますので、手首に不安を抱えている方は、注意をしなければなりません。

特に演奏した後に何もせずにそのまま帰ってしまうような方は要注意で、たいした事ないと思っていても、ピアノを弾けば必ず手首は疲労しますので、最低限指や手首、腕などのストレッチを行い、疲労を流れやすくしてあげる必要があります。

また、定期的にウォーキングなどを行い、全身状態を良くしてあげる事も有効です。

演奏の仕方(奏法)を見直してみる

ピアノで手首を痛めてしまった場合、やはり「弾き方」も見直してあげる事が大切です。

体の問題を解決しても、弾き方に無理があれば再び手を痛めてしまいますので、再発防止の意味でも重要な事だと思います。

具体的に奏法を見直して行く際は、下記の事を参考にしてみてください。

  • 体に負担はかかっていないか
  • 無理やり動かそうとしていないか
  • 無理に指を広げていないか
  • 弾くときに指や腕に力が入りすぎていないか
  • 全身を使わず手だけで弾いていないか

これらはあくまでも一例ですが、無理がかかってないか考慮しながら、指導してくれている先生と相談してみてください。

ただし、どうしても弾き方は恩師の先生に依存する部分もあると思います。

指導して頂いている方法が自分に合うとは限りませんので、自分でも他に良い方法がないか、探してみるのも大切です。

これはピアノ講師をされていた患者さんに教えて頂いた話なのですが、ピアノの弾き方にも、ドイツ流やフランス流など、様々な方法があるそうです。

指で弾くような弾き方もあれば、腕の重さを利用して押すように弾く弾き方など様々です。

それぞれに違った良さはあると思いますので、選択肢をいろいろ広げながら、自分の体に合う方法を見つけてみてください。

それでも良くならない場合は?

休息を取ったり、さまざまな対処法を試してみても、人によっては症状が改善しない事があります。

そんな時は、自己流のケアでは限界がありますので、病院や整体院等に行き、プロの先生に相談してみてください。

病院でのアプローチには、整形外科でのステロイド注射などもありますが、副作用もあるため、処置を受ける際は、しっかりお医者さんと相談する事が大切です。

当院の場合は、手技による施術で腱鞘炎にアプローチしていきますが、具体的な治し方については「手首や指の腱鞘炎の治し方」に書いてありますので、合わせてご覧ください。

まとめ

ピアノの弾き過ぎで手首が痛くなってしまった場合は、我慢したり、そのまま弾き続ける事はよくありませんので、適切な対処が必要です。

対処のポイントとしては、組織に負担をかけず、回復する時間を与える必要がありますので、休養を取る事と、施術や定期的なメンテンスを受け、体の状態を改善してあげる事です。

中には演奏の仕方で手に負担をかけやすい方もいるかと思いますので、そのような方の場合は、教えてくれている先生とよく相談して、負担のかからない方法を見つけてあげる必要があります。