痛みで首が回らない時の対処法について

首の痛み

痛みで首が回らない時って、ただ痛いところを揉んだりストレッチするだけでは、症状が改善されないってご存知でしたでしょうか?

「振り向けない」「うがいができない」など、ひどい状況になってしまうと、今すぐどうにかしたいと思ってしまうものですが、自己流でむやみに患部をいじってしまうと、人によっては症状の悪化を招く恐れもあります。

正しく対処をすれば、ひどい状態にならずに済むと思いますので、プロの視点から首が回らない時の対処法をまとめてみました。

痛みで首が回らない時の対処法

首が回らない時の大事なポイントは、患部だけに注目するのではなく、「全体を見る」事です。

これはどのような症状にも言えることなのですが、首周りの場合は特に大切は事ですので、順を追って解説していこうと思います。

ただ首にアプローチするだけではダメ

首が回らないほどに痛くなっている時は、基本的に頚椎だけの問題ではありません。なぜなら、首は全体で60°回ると言われていますが1)、頚椎自体の回旋角度は50°しかないからなのです2)

これはどういう事なのかというと、首の関節だけを片方に回して行くと、首は全体で50°しか動きません。

残りの10°はどうなっているかと言うと、胸椎も含めた他の関節がちょっとずつ動いてくれる事によって、全体として60°という角度が作られるのです。

そのため、首の症状にアプローチする際も、当然首だけの施術では不十分になります。

首だけではなく、背骨全体も含めて原因を見つけて行くことが大切になりますので、体全体をみてアプローチする事が大切です。

他の部分からの影響を考える

普通に考えると「痛い所が悪い」と思うかもしれませんが、首の場合は他の部分が悪いことによって、痛みが出てしまう場合が多々あるのです。

これは、ヒビが入ったマンションに住んでいる状態を想像してもらえばわかると思います。

住んでいる人からすれば、問題として認識できるのはヒビだけかもしれませんが、その原因はマンションの基礎部分が歪んでしまった事によって引き起こされています。

いくらヒビを修理しても、大本が歪んでいれば再びヒビが出来てしまう可能性もありますし、下手をすればまったく別の問題を引き起こしてしまう可能もあるため、目に見えている問題だけに注目するのではなく、大本の原因を探る必要があるのです。

人間の体も同様で、骨盤や腰椎が歪んでいると、その上にある胸椎や頚椎も歪んでしまいますので、負担をさばききれず、最も圧力がかかって所に痛みが引き起こされてしまいます。

そのため、首が回らなくなってしまった時は、必ず他の部分からの影響も考えてあげる必要があるのです。

腰、骨盤を整える

腰や骨盤の重要性はさきほど説明した通りですが、それ以外にも、腰の歪みは頚椎の歪みと連動する場合があります。

例えば腰椎の5番や4番が歪んでしまうと、それに対応するかのように、上部頚椎に歪みが生じてきます。

もちろんこれは人によって歪み方も変わってくるのですが、やはり首の問題を改善するためには、腰の状態は重要なのです。

そのため、当院では例え首に症状が出ていたとしても、骨盤の歪みや腰椎の状態は、かならず把握するようにしています。

これらが整えば、首にかかる負担も減り、体が治る環境が整いますので、次に説明する頚椎胸椎のアプローチが効果的に働くのです。

頚椎、胸椎を整える

頚椎、胸椎に対するアプローチとしては、筋肉を揉むより、関節が動かず固まっている部分に施術を行うと効果的です。

当院では、固まってしまっている靭帯や関節包に直接アプローチする方法も取りますが(靭帯や関節包が緊張することで関節を固めています)、関節がゆるみたい方に誇張することで、無理なく体が弛まる方法を採用しています。

強い力で無理やり施術を行うと、施術後に反動で余計固まってしまう場合がありますので、強い刺激がお好きな方は注意が必要です。

ここまで進んでくると、筋肉や骨格の問題には、かなり変化が出てくるはずです。

もしこれらにアプローチしても、関節が緩まなかったり、症状が変化しない場合は、ストレスから症状が作られている可能性もありますので、心理療法も含めたアプローチをする必要があります。

自分で出来る対処法としては?

自分で出来る対処法としては、主に以下のようなものがあります。

パニックになったり必要以上に怖がらない

まず1番大事な事は、パニックになったり、必要以上に今の状態を怖がらない事です。

首が回らなくなってしまうと、どうしても焦りや不安で怖くなってしまうものなのですが、不安や恐怖は痛みの感じ方を強くさせてしまいますので、まずは落ち着いて、今の状態をしっかりと受け止める事が大切です。

この受け止める事ができるかできないかは結構大切なポイントで、恐怖や不安に縛られてしまった方は、痛みが強くなるだけではなく、心理的なストレスからも体を固くしてしまいますので、さらなる症状悪化を招いてしまう可能性があります。

逆に、この辺に怖さがない方は、心理面から来る緊張がありませんので、胸椎や頚椎などの問題箇所を整えるだけで、症状が改善されたりするのです。

テニスボールで背中をマッサージ

「ただ首を治療するだけではダメ」の項目で、首を回すには胸椎も重要な働きをしている事を解説しましたが、自分で対処する時も、胸椎周りを緩めてあげれば、症状が緩和していく可能性があります。

方法としては、まずはテニスボールを用意して頂いて、仰向けの状態で床に寝てください。

その後、床と体でテニスボールを挟み、背中を刺激してあげるだけなのですが、この時のポイントとしては、同じ箇所をずっと刺激するのではなく、全体をまんべんなく刺激してあげてください。

よく心地いいからとか、効きそうだからと言って同じところだけやろうとする方がいますが、同じ箇所をずっとやっても効果はたいしてありませんし、逆に痛めてしまう可能性もあるので注意してください。

※テニスボールが背骨に当たらないように注意してください。

安静にし過ぎはNG

痛くなった時は安静にしていればよくなりそうなイメージがありますが、関節や筋肉が固くなってしまって痛みが出ているような場合は、安静が逆に症状を悪化させてしまう恐れがあります。

できれば無理のない範囲で体を動かしてあげる事が大切なのですが、難しければ、軽くウォーキングするだけでも、体が固まるのを防げるかもしれません。

まとめ

首が痛くて回らない時は、ただ患部を揉むだけではなかなか症状は改善されません。

頚椎や胸椎の状態を把握しながら、腰、骨盤を含めた全身を見て、問題点を見つけていく必要があります。

体がある程度整っても症状が変化しない場合は、心理的なアプローチも効果的ですので、上記のような症状にお困りの方は、是非当院にご相談ください。

引用参考文献
1)日本整形外科学会、日本リハビリテーション学会制定「関節可動域表示ならびに測定法」より
2)坂井建雄・松村譲兒(2014)プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 医学書院 P123