あなたはシーバー病という、子供の踵に起こる疾患をご存知でしょうか。
成長期のお子さんで、運動後に踵が痛い。熱感があって腫れているなどの症状が見られる場合は、もしかしたらシーバー病になってしまっているかもしれません。
あまり聞き慣れない疾患ですので、シーバー病って何?何かの病気?と不安に思っている方も多いと思いますので、今回はシーバー病についてまとめてみました。
お父さんやお母さんにとって、自分の子供が痛そうにしているのは心配かと思いますが、シーバー病はしっかりと状態を把握して、適切な対策をとっていけば自ずと改善されていきます。
原因や治し方についても解説してありますので、ぜひ参考にしてみてください。
シーバー病とは?
シーバー病は別名セーバー病、踵骨骨端症などとも言われる障害で、子供のかかとに起こります。
年齢的には10歳前後が多いと言われていますが、サッカーやバスケットなど、運動をやっている子供に多く見られます。
メカニズム的にはオスグットと同じですが、子供の骨は大人とは違い、成長するために柔らかい状態になっていますので、アキレス腱がかかとの骨を過度に引っ張ると、刺激を受けてしまい、炎症を起こしてしまうのです。
大人でも、たまにかかとの痛みを訴える方もいますが、大人の場合は成長軟骨が閉じて固い骨になっていますので、単純にアキレス腱が骨を引っ張ることで起こる、「アキレス腱付着部炎」と呼ばれる踵骨とアキレス腱の間の炎症になります。
シーバー病の症状とは?
シーバー病は運動中や運動後に、かかとの痛みや腫れなどの症状を引き起こします。
地面を蹴ったり、アキレス腱を伸ばすような動作で痛みが出やすいですが、踵を押すだけでも圧痛が見られる場合もあります。
過去私が見た患者さんで言うと、体の状態がかなり悪かったため、運動後だけではなく、普通に歩くだけでも強い痛みが出ている子もいました。
ここまで強い症状を抱えてしまうと、今度はそれをかばって違う所に問題を作ってしまう恐れもありますので、もしお子さんを見ていて足をかばっている様子がわかったら、すぐに適切な対処をした方が良いと思います。
シーバー病の原因とは?
シーバー病のメカニズムは、先程解説した通り柔らかい骨を筋肉が引っ張ってしまうことで引き起こされます。
ただ筋肉が骨を引っ張るだけでは、シーバー病にまではなりませんが、症状を発症させやすくしてしまう原因がいくつかありますので、一つ一つ解説したいと思います。
ふくらはぎやアキレス腱の緊張
踵にはアキレス腱と呼ばれる長い腱がくっついているのですが、アキレス腱は腓腹筋とヒラメ筋という2つの筋肉から作られます。
そのため、ふくらはぎの筋肉が緊張してしまったり、アキレス腱が固くなってしまうと、踵骨を過剰に引っ張る事になってしまうため、シーバー病を引き起こす可能性があるのです。
通常であれば、子供は大人と違って筋肉に柔軟性があります。
ですが、スポーツで過度に負担がかかっていたり、体の歪みが強かったりすると、固くなってしまうことがあるので注意が必要です。
特にスポーツをやっているお子さんの場合は、競技によって偏った負担が体にかかりますので、ふくらはぎに負荷がかかる場合は、シーバー病を発症させやすくなってしまいます。
股関節の問題
股関節は球状の関節で、周りを靭帯や関節包などが覆っています。
踵の症状と股関節は関係ないように思いがちですが、ここに問題が起きてしまうと、体が連動してふくらはぎを固くしてしまう事がありますので、注意しなければならないポイントです。
股関節は前面と後面の筋肉によってバランスが大きく左右されますが、スポーツをやっている子の場合、臀部周りの筋肉に負担がかかりやすいように思います。
以前、バスケットボールをやっていてシーバー病になってしまった患者さんがいたのですが、その子の場合は、この股関節が原因となっていました。
バスケットは元々ジャンプやステップ、ターンなどの動作で足に負担がかりやすいのですが、そこに加えて股関節に問題が起きていたため、ダブルパンチで踵を痛めてしまっていたのです。
回内足や回外足
回内足は踵が内側に傾いた状態をいい、回外足は反対に踵が外側に傾いた状態をいいます。
このように、踵回りに歪みが生じてしまうと、足首や踵の部分でアキレス腱が曲げられる事になりますので、アキレス腱にかかる負荷が増大します。
アキレス腱にかかる負担が増えれば、踵を引っ張る力を増やしてしまいますので、結果として踵にダメージを与えてしまい、シーバー病を発症させてしまうのです。
神経の緊張
ふくらはぎの筋肉が固くなると、踵を引っ張ってシーバー病になりやすくなる。というのはここまで説明した通りですが、このふくらはぎの固さは、神経の緊張によっても引き起こされます。
特に影響を及ぼすのが座骨神経と呼ばれる神経ですが、座骨神経は腰から足まで走行していますので、腰や股関節、ももの裏など、様々な所で圧迫を受けますので、ダメージを負ってしまう場合があるのです。
ダメージを負った神経は、緊張してふくらはぎに悪影響を及ぼしますので、結果としてふくらはぎを固めてしまい、踵を引っ張る力を強めてしまいます。
足回りに問題のある患者さんは、だいたい座骨神経の問題も一緒に抱えていますが、筋肉ばかりが注目され、見逃されている事もあるので注意が必要です。
シーバー病を改善するために必要な事とは?
シーバー病を良くするために必要な事としては、以下のポイントの改善が挙げられると思います。
- ふくらはぎやアキレス腱の柔軟性を高める
- 股関節のバランスを整える
- 足首周りの歪みを整える
- 腰や骨盤周りの歪みを正す
ふくらはぎやアキレス腱の柔軟性を高める
シーバー病を改善させるためには、やはりふくらはぎの柔軟性は大切です。
ここが良い状態になっていて、体のバランスが取れていれば、自然と症状は出なくなると思いますので、まずは踵と合わせてここの状態をチェックしていきます。
チェックをした際に、ふくらはぎ自体に問題があればそのままここを施術していくのですが、固くなってしまう原因が別にある場合もありますので、ふくらはぎやアキレス腱の柔軟性が低下してしまったのはなぜかという部分を考慮しながら、全身を調べる必要があります。
柔軟性の高め方としては、個人で行うならふくらはぎ(腓腹筋とヒラメ筋)のストレッチで良いと思います。
股関節のバランスを整える
先程股関節のバランスは前と後ろの筋肉に影響を受ける。とお話しましたが、シーバー病の方を見ていると、特に中殿筋や梨状筋、大腿筋膜張筋といった骨盤の横からお尻にかけての筋肉が固くなっている場合が多いです。
これはサッカーやバスケットなど、激しく体を動かす方によく見られますが、ここが固いままだと、足に悪影響を出してしまいますので、しっかりと緩めてあげる事が大切です。
やり方としては、普通に臀部をストレッチするだけでも良いと思いますが、大腿筋膜張筋などはストレッチでは伸ばしづらいので、テニスボールなどの使用して、直接患部を刺激してあげても良いと思います。
また、股関節は筋肉だけでなく、関節周りの靭帯や関節包に問題が起こることもありますが、これらは自分で何とかするのは難しいので、プロにお任せした方が良いと思います。
足首周りの歪みを整える
足首周りの問題と言うと、足関節の歪みや足根骨の問題などいろいろありますが、その中でも特に注意したいのが、回内足や回外足です。
回内足や回外足は、患部だけ見れば踵骨の歪みですが、足の歪みは結構複雑で、純粋にそこだけ問題ではなく、他の部位から影響を受けている場合もあるので注意しなければなりません。
神経や下腿骨間膜と呼ばれる膜の問題、下半身のバランスに関節の歪みなど、何が悪影響を与えているのか把握しないといけませんので、全身の状態をチェックしながら、問題箇所を特定していきます。
自力で整えるのは難しい部分でもありますので、気になる場合は、当院にご相談ください。
腰や骨盤周りの歪みを正す
足やふくらはぎの問題は、実は腰や骨盤まわりの歪みからも引き起こされます。
もちろん足が歪んだ影響で腰に問題を起こしてしまったパターンもあるのですが、ケガや衝撃を受けていないなら、足以外からの問題の方が大きいと思います。
子供の場合はそこまで歪みは強くないですが、スポーツで偏った体の使い方をしていたり、学校の授業などで座り過ぎが多いと、腰にダメージを与えてしましますので注意してください。
実際に腰や骨盤を整える時は、腰椎、骨盤、股関節、下肢の筋膜の状態を見ながら、バランスが取れるように施術を行っていきます。
シーバー病にマッサージは有効?
マッサージは筋肉を緩めたり、興奮した神経を沈静化させる働きがあるため、アキレス腱やふくらはぎの筋肉が緩んでくれれば、シーバー病の症状は緩和される可能性があります。
お手軽にできる方法ですので、お子さんにやってあげると良いと思いますが、そこまでの症状を引き起こしてしまう方は、だいたい体がかなり固くなっています。
ただ筋肉を揉むだけでは緩まない場合もありますので、そんな時は腰や骨盤も含めて、体全体を良い状態にしながら、足が緩む余裕を作ってあげる事が大切です。
そのため、やはりしっかりとした施術を受ける必要がありますので、改善はプロにお任せして、マッサージは日々の疲れを取る目的で行ってあげると良いと思います。
シーバー病に対するサポーターやインソールは?
当院では、手技療法を用いてシーバー病にアプローチしていますが、それ以外でも、シーバー病にはサポーターやインソールといった方法もありますので、一つ一つ解説して行こうと思います。
サポーター
基本的にシーバー病専用のサポーターはありませんが、踵を保護したり、ショックを吸収するようなものでしたら、踵に対する負担を減らしてくれますので、症状の緩和が期待できます。
ただし、サポーターはあくまでもサポート的に使うものですので、例え症状が軽くなったとしても、足が治ったわけではないことを忘れてはいけません。
負担を減らすことは大切なポイントですが、それと並行して、必ず体の状態を改善させたほうが良いと思います。
インソール
インソールもサポーター同様、クッション性があり、踵にかかる衝撃を吸収してくれるようなものであれば、症状の緩和が期待できます。
また、少し高くはなってしまいますが、回内足や回外足の補正に効果のあるインソールもありますので、踵の歪みが正される事で、負担がかかりづらくなる効果もあります。
ただ、こちらもサポートして負担を減らしているだけで、踵に負担がかかりやすい状況が変化したわけではありませんので、合わせて体の改善も必要になると思います。
改善までの期間はどのくらい?
これは一概にどのくらいと言えないのですが、シーバー病の場合、運動量のコントロールがうまくできていて、体の歪みとふくらはぎの緊張が取れてくれば、自然と症状は改善されます。
体の問題が少ない子でしたら、これらはそこまで時間がかからないと思いますが、歪みがひどかったり、腰や股関節周りにまで問題があると、改善までには時間がかかると思います。
また、成長期のお子さんは、常に骨に負担がかかりやすいという状況もあります。
骨の成長に対して、筋肉の成長は遅いため、常に踵は引っ張られやすい状態にありますし、お子さん自身好きでやっている運動を我慢する事ができない場合もありますので、一度症状が治ったとしても、再び痛みが出てしまう可能性もあります。(自己ケアや運動量のコントロールで防ぐことは可能です。)
ただし、基本的には成長期が終われば症状も出なくなりますので、成長期でリスクのある間は、なるべく無理をしすぎない事と、日頃から体をケアして、柔軟に保っておく事が大切です。
シーバー病に対するテーピングについて
シーバー病に対するテーピングは、足にかかる負担を減らすという意味で有効な方法です。
アキレス腱をサポートしたり、踵を保持してあげると、筋肉が踵を引っ張る力を弱める事ができますので、それだけでも症状の緩和につながります。
当院でもこちらのページでシーバー病用のテーピングを解説していますので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
現実症状がある方だけでなく、一度治っても成長期の間は油断してはいけません。
サポートに使うのはもちろん、予防のためにも効果的ですので、足に不安がある方は運動前にテーピングを貼ってあげてください。
シーバー病改善に役立つストレッチ
シーバー病に対するストレッチとしては、ふくらはぎや臀部の筋肉を中心に行ってあげると良いと思います。
ふくらはぎのストレッチ
ふくらはぎのストレッチは、普通にアキレス腱伸ばしで良いと思います。
この時に、ちょっとした工夫をしてあげると更に効果的なのですが、アキレス腱を伸ばしをしてる状態で、伸ばしている側の膝を少し曲げてみてください。
膝を伸ばした状態だと、主に腓腹筋と呼ばれる筋肉が伸ばされます。
膝を曲げてあげると、今度はヒラメ筋という筋肉が主に伸ばされるようになりますので、違った部分を伸ばすことができます。
そのため、膝を伸ばしていると、アキレス腱と膝の部分両方で筋肉が伸ばされるので、腓腹筋のストレッチ効果が増します。
反対に、膝を曲げると腓腹筋が縮んで伸びなくなりますので、奥にあるヒラメ筋のストレッチ効果が強くなります。
ただし、かかとの痛みや炎症が強い場合は、ストレッチするだけでも痛みを誘発してしまう事もありますので、一度やってみて少しでも嫌な感じがするようでしたら、すぐにストレッチを中止して、プロにお任せするか、別の方法を選択してください。
臀部のストレッチ
1.臀部のストレッチは、座った状態で膝を抱え込むように行っていきます。
まずは片方の足を伸ばし、反対の足をクロスさせください。
クロスさせた側の足を抱えると、臀部の筋肉が伸びて来ますので、抱える強さを調整しながら、ストレッチをかけていきます。
2.座った状態で膝を曲げ、反対の足を膝の上に乗せていきます。
この状態でも臀部にはストレッチがかかりますが、更に効果を高めるために、体と足を近づけるようにしてみてください。
それだけで臀部の伸び方が変わってくると思いますので、自分の心地よい範囲でストレッチを行ってください。
まとめ
今回はシーバー病の原因と治し方についてまとめてみました。
ちょっとした痛みなら我慢して運動してしまう子も多いですが、成長期はまだ骨が柔らかい状態ですので、もし少しでも違和感を感じているなら、早めに対処した方が良いと思います。
骨が固くなるまでは症状を繰り返してしまう恐れもありますが、日頃からのケアと運動量のコントロールで、再発は防げると思いますので、お子さんが症状でお困りの場合は、お気軽にご相談いただければと思います。