姿勢の乱れや肩こりなどを引き起こす骨盤の後傾。健康で美しい体を維持するためには、骨盤の正常化が大切です。
今回は後傾が引き起こす症状と、関連する筋肉をまとめてみましたので参考にしてみてください。
骨盤の後傾とは?
骨盤の後傾とは、簡単に言えば骨盤が後ろ側に傾いた状態です。
骨盤は股関節を軸として前後に動きますので、ニュートラルの状態より上部が後ろに傾いて入れば、だいたい骨盤は後傾していると言えます。
見た目的にも、後傾は猫背を引き起こしたりしますので、わかりやすいのではないかと思います。
骨盤の後傾をチェックしてみよう
それでは、ここから実際に骨盤の状態をチェックしていきましょう。
骨盤の後傾は、上前腸骨棘と上後腸骨棘と呼ばれる部分を目安にするとわかります。
慣れていないと見つけづらいかもしれませんが、まずは前と後ろの「骨の出っ張り」そ探してみてください。
そこが上前腸骨棘と上後腸骨棘になります。
場所がわかったら、今度はそこに水平の線を引いていきます。
この時に、上前腸骨棘と上後腸骨棘との間が指で2本分以下だと、骨盤は後傾しています。
反対に、指で2.5本分以上になっていると、骨盤は前傾していると言えます。
骨盤が後傾してしまうとこんな恐れも
骨盤の後傾は、体に様々な問題を引き起こします。
猫背
猫背は多くの方を悩ませる問題ですが、この猫背も、骨盤の後傾によって引き起こされます。
骨盤が後傾してしまうと、それに伴い腰椎も後ろへ傾くのですが、そのままだと体は倒れてしまうため、人間はどこかでバランスを取ろうとします。
そのバランスを取ろうとする動きの一つが、「背中を前に丸める」ということなのです。
こうなってしまうと、いくら自分で背すじを伸ばそうとしても、土台自体が傾いてしまっている状態ですので、なかなか体は伸びてくれません。
無理に伸ばそうとするよりも、丸めていた方が楽だと体は判断してしまいますので、これが猫背を作ってしまうのです。
巻き込み肩
巻き込み肩は、肩が前に巻き込まれたような形になっている状態です。骨盤の後傾は、この巻き込み肩の原因にもなります。
「骨盤の後傾は猫背を引き起こす」というのは、先程説明した通りですが、猫背になると、それに伴い肩が前に出てきます。
肩が前に出た状態だと、腕の重さが横ではなく前にかかってきますので、自然と肩が内側を向いて、巻き込み肩を作ってしまうのです。
そのため、このような問題を抱えている方は、肩だけではなく、背骨や骨盤の状態も見てあげる必要があります。
肩や首のこり
猫背や巻き込み肩になってしまうと、やはり肩や首のこりを引き起こします。
本来なら、頭の重心は背骨の上にあるため、重さはしっかりと体で支える事ができます。
ですが、猫背や巻き込み肩になってしまうと、重心が前にズレるため、背骨で支えるのが不可能になってしまい、後ろ側の筋肉に負担をかけてしまうのです。
首や肩の筋肉に負担がかかれば、当然凝り固まってしまうのはもちろんですが、長くこの状態が続くと、緊張型頭痛などを引き起こす恐れもあります。
O脚になりやすい
O脚というと、足の問題だと思われがちですが、実は骨盤が大きな原因となっている場合があります。
骨盤が後傾すると、重心が後ろに傾くのですが、体はそれを支えるために、股関節を外旋して対応し始めます。
股関節が外旋してしまうと、当然膝も外側に向いてしまいますので、これがO脚を引き起こしてしまうのです。
このような場合、いくら足を整えても、なかなかO脚は改善されません。
もともとの原因は骨盤にありますので、足だけではなく、骨盤の状況もみて、体を整える必要があるのです。
膝周りの負担増
骨盤が後傾し、O脚になれば、当然膝にも負担がかかります。
O脚は内側の関節面に負担をかけてしまいますので、この状態が長く続けば、変形性膝関節症などを引き起こす恐れがあります。
また、骨盤の後傾は膝の位置が前側に移動しやすいという特徴もあります。
重心よりも前に膝が出てしまうと、それだけでも負担が増えますので、余計にダメージを与えてしまうのです。
骨盤の後傾に関与する筋肉とは?
骨盤の後傾は、筋肉の緊張や短縮、筋力低下によって引き起こされます。
緊張や短縮によって骨盤後傾を引き起こす筋肉
ハムストリングス
ハムストリングス(半腱様筋、半腱様筋、大腿二頭筋)は、大腿部の後ろ側にある筋肉です。
骨盤の坐骨という所に筋肉が付着していますので、ここが短縮してしまうと、骨盤を後ろ側に傾けてしまいます。
普通に生活していると、ハムストリングスは縮むことはあっても伸ばす機会は少ないため、結構この筋肉が原因で後傾している方は多いです。
腹直筋
腹直筋は腹部の前面にある筋肉で、よく腹筋を鍛えてお腹をボコッと割りたいという場合は、だいたいこの部分のことを指しています。
筋肉自体は骨盤の前面にある恥骨という所に付きますので、この筋肉が短縮してしまうと、骨盤を前側から引っ張り上げる形になりますので、相対的に骨盤が後傾します。
大臀筋
大臀筋は臀部にある筋肉で、股関節を伸展させる働きがあります。
筋肉は骨盤の後面から大腿骨にかけて付着していますので、ここが短縮してしまうと、骨盤を後ろから引っ張る形になります。
内腹斜筋・外腹斜筋
内腹斜筋・外腹斜筋も腹部にある筋肉で、前面から側面にかけて、広い範囲で走行している筋肉です。
骨盤や鼠径靭帯と呼ばれる靭帯に付着していますので、ここが固くなってしまうと、骨盤を前側から引っ張り上げる形になり、やはり骨盤の後傾を引き起こします。
筋力が低下すると骨盤後傾を引き起こす筋肉
腸腰筋(大腰筋+腸骨筋)
腸腰筋は背骨や骨盤から、大腿骨に向かって走行している筋肉です。強力な股関節の屈筋で、骨盤の前面を通るように走行しています。
ここの筋力が低下してしまうと、骨盤を前側に引っ張る力が弱くなってしまいますので、骨盤後傾を引き起こします。
大腿直筋
大腿直筋は大腿部の前面にある筋肉で、骨盤の前側にある下前腸骨棘という所に付着しています。
ここの筋力が低下してしまうと、骨盤を前から引っ張る力が弱くなるため、骨盤後傾を引き起こします。
縫工筋
縫工筋は骨盤から大腿部を通って膝にまで走行している筋肉です。いろいろな作用があるのですが、骨盤の上前腸骨棘という所に付着しています。
ここの筋力低下も骨盤を前に引っ張る力を弱めるため、骨盤の後傾を引き起こします。
脊柱起立筋
脊柱起立筋は背中を縦に走行している筋肉群で、その名の通り、良い姿勢を維持するためには大切な筋肉です。
筋肉自体は腸肋筋、最長筋、棘筋という3つに分かれていて、一部が骨盤に付着していますので、通常であれば、骨盤を後ろ側から引き上げてくれる働きがあります。
ですが、ここの筋力が低下してしまうと、その引っ張りあげる力がなくなってしまいますので、相対的に骨盤が後傾しやすくなります。
骨盤後傾を治すには?
骨盤の後傾を治すためには、主に以下の二つの方法があります。
緊張や短縮している筋肉を緩める
筋肉の緊張や短縮によって骨盤が後傾している場合は、筋肉を緩めてあげると、問題が改善される可能性があります。
その際ですが、腹部周りの筋肉はアプローチが難しいので、まずはハムストリングスや大臀筋など、後面にある筋肉をチェックしてみてください。
チェックしてみた結果、筋肉が固くなっていたり、短縮していたりする場合は、緩めてあげると後傾が改善されるかもしれません。
筋肉を緩める方法は、体に対してリスクが少ないので、個人的には、まずはこちらをオススメしています。
筋力が低下している部分を鍛える
筋力が低下した事で骨盤が後傾している場合は、対象の筋肉を鍛えてあげると、問題が改善される場合があります。
特に腸腰筋は骨盤を前傾させる筋肉としてはかなり強力ですので、もし筋力低下が原因なら、必ずチェックしないといけません。
ただし、注意点もあります。
筋肉を鍛える場合は、しっかりと筋力バランスをみてトレーニングしないと、体のバランスを崩してしまう恐れもあります。
よく、健康のためにトレーニングして余計体を壊してしまっている方がいますが、そうならないためにも、事前にしっかりと体の状態を把握必要があります。
後傾に関係する筋肉をチェックしてみよう
筋力低下やそのバランスを自分で調べるのは大変ですので、ここでは緊張や短縮を引き起こしている筋肉の検査法を紹介したいと思います。
ハムストリングス
ハムストリングスの柔軟性は、床に仰向けに寝た状態で確認していきます。
片方の膝を立て、反対側の膝裏辺りを両手で抱え、足を引き寄せるようにしてみてください。
この時に、膝をまっすぐ伸ばしながら90°くらいまで足を上げられるなら、柔軟性はちゃんとあります。
反対に、膝がまっすぐ伸びなかったり、足が全然上がらないような方は、ハムストリングスが短縮している可能性があります。
大臀筋
大臀筋の柔軟性は、座った状態で確認していきます。
まずはあぐらをかくように座っていたただき、チェックする方のふくはぎを両腕で抱えてください。
そのまま足を胸の方へ近づけて行き、ある程度床と並行くらいまで上げる事ができるなら、適度な柔軟性があると言えます。
反対に、全然足が胸に近づかなかったり、上がらないような場合は、大臀筋の柔軟性に問題があるかもしれません。
筋肉にアプローチしても後傾が改善しない場合は?
骨盤の後傾は、基本的には筋肉の前後バランスによって決まります。
筋肉が固すぎたり、筋力が低下してしまうと、骨盤が傾いてしまうのは先程説明した通りです。
ですが、実は後傾の原因は、それだけではありません。
筋肉の問題以外にも、股関節が原因で歪んでしまっていたり、背骨がしっかりと反れない事で、後傾が治らない場合も多々あります。
そのため、もし筋肉にアプローチしても後傾が改善しないなら、別の原因を探ってあげる必要があるのです。
骨盤の問題ではありますのが、どこに原因が潜んでいるかは人それぞれですので、もしこのような問題でお困りでしたら、お気軽に当院にご相談ください。
まとめ
今回は骨盤の後傾に関与する筋肉をまとめてみました。
緊張や短縮によって後傾を引き起こすのがハムストリングス、腹直筋、大臀筋、内腹斜筋・外腹斜筋。
筋力低下によって後傾を引き起こすのが腸腰筋、大腿直筋、縫工筋、脊柱起立筋です。
これらの筋肉を整えてあげると、ある程度後傾も改善されると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。